イラクの政治家。反十字軍の英雄サラディンの故郷ティクリートの生まれ。カイロ、バグダード両大学を卒業。1956年のスエズ戦争(第二次中東戦争)でエジプトのナセルを支持し、反イギリス・反フランス・反イスラエルの大衆デモに参加、同年暮れにバース党(アラブ復興社会党)に入党した。1959年バース党テロ組織の一員として、前年のクーデターでファイサル王制を打倒したカセム首相の暗殺を謀るが失敗、エジプトに亡命。1963年に帰国し、政治活動、投獄、脱走、地下活動を繰り返した後、1968年7月バクル将軍が実権を握ったバース党穏健派のクーデターで重要な役割を果たした。1969年11月に国権の最高機関である革命評議会の副議長となり、1979年7月、バクル辞任の後を受けて大統領に就任。革命評議会議長、国軍最高司令官なども兼ね、権力を一手におさめた。その後も波乱の連続で、1990年のクウェート侵攻とこれに続く1991年の湾岸戦争など、なにかと国際的に非難を受けることが多かった。1995年10月の国民投票で信任され、引き続き7年の任期が決まった。しかし、国連の大量破壊兵器査察団によるイラクへの立ち入り査察に非協力的態度をとったため、2003年3月、アメリカ、イギリス両軍はフセイン政権打倒と大量破壊兵器を排除する目的でイラクを攻撃(イラク戦争)。同年4月にはイラクの主要な都市がアメリカ、イギリス両軍に制圧され、フセイン政権は崩壊した。その後は逃亡を続けていたが、同年12月13日、故郷ティクリートの郊外に潜伏しているところをアメリカ軍に拘束された。その後、2004年6月連合国暫定当局(CPA)からイラク暫定政府に主権が移譲された直後、法的には身柄がイラク側の管轄下に移されたが、実質的にはアメリカ軍の拘束下に置かれた。同年7月、フセインと旧政権幹部を裁く特別法廷が開廷し司法手続きが開始され、2005年10月にはフセインの初公判が開かれた。本人は罪状認否で無罪を主張したが、2006年6月検察側は死刑を求刑、同年11月イラク高等法廷(特別法廷から改称)は人道に対する罪でフセインに死刑(絞首刑)判決を下した。同年12月26日上訴審で一審判決が支持され死刑が確定、同30日に刑が執行された。
[奥野保男]
『酒井啓子著『フセイン・イラク政権の支配構造』(2003・岩波書店)』▽『岡本道郎著『ブッシュVSフセイン イラク攻撃への道』(2003・中央公論新社)』
ヨルダン国王(在位1953~1999)。預言者ムハンマド(マホメット)の血を引くハーシム家の一員としてアンマンに生まれる。アレクサンドリア、イギリスで教育を受ける。1952年病気の父タラール国王の退位に伴い、翌1953年弱冠18歳で王位を継承。国王就任後、アラブ世界および国内の民族主義運動の隆盛や革新勢力の台頭によって難局を迎えるが、独自の政治力でこれを切り抜けた。1956年のグラブ・パシャ将軍の解任、同年左派民族主義者のナブルシを首班とする政権の承認、1957年イギリス・ヨルダン条約破棄に対する同意などを譲歩させられた。1958年エジプト・シリアの統合に対抗してイラクとアラブ連邦を結成するが、同年イラクでクーデターが起こり同連邦はまもなく瓦解(がかい)し、アラブ世界で孤立した。さらに、1964年からのパレスチナ運動の活発化、1967年の第三次中東戦争におけるヨルダン川西岸の喪失、1970年からのパレスチナ・ゲリラとの対立などの難問に直面した。パレスチナ問題解決のために「ヨルダン・パレスチナ連合国家」構想をもっていた。1988年7月、ヨルダン川西岸地域に対する政治的、法的な支配の放棄を発表、これによりパレスチナ国家の樹立が宣言され、パレスチナ解放機構(PLO)との関係が改善した。1990年8月のイラクによるクウェート侵攻に始まる湾岸戦争ではイラク寄りの姿勢を堅持、国際社会におけるヨルダンの立場は悪化したが、国内的には国民の信頼をかちえた。その後1994年10月にはイスラエルと平和条約を締結し、地域開発等で協力関係を推進、しかし1995年11月にイスラエルのラビン首相が暗殺され、強硬派のネタニヤフ首相が政権についたため、イスラエルとパレスチナ暫定自治政府との摩擦が増加、両者の間で微妙な対応を迫られた。1976年(昭和51)以降1989年(平成1)まで数回来日。1999年死去にともない長男のアブドラが王位を継承した。
[木村喜博]
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