国際連合の主要機関の一つで,国際平和と安全の維持を主要な任務とする。理事国は5常任理事国と10非常任理事国で構成される。常任理事国であるアメリカ,イギリス,ソ連(ロシア),フランス,中国の5ヵ国は,国際連合憲章23条に明記されているから,常任理事国をそれ以上ふやすためには,憲章の改正が必要となる。非常任理事国は,国連発足当時は6ヵ国であったが,加盟国,とくにアジア・アフリカ諸国(AA諸国)の著しい増加にともない,AA諸国の強い要請で,1965年8月31日,憲章の改正により10ヵ国に増加した。非常任理事国の任期は2年で,連続再選はされない。毎年5ヵ国ずつ改選され,アジア・アフリアに5,ラテン・アメリカに2,東欧に1,西欧その他に2と議席の地理的配分に従って,総会で選ばれる。任期を終了した国は,引き続き再選されない。日本は,これまでに1958-59年,66-67年,71-72年,75-76年,81-82年,87-88年,92-93年,97-98年の8期理事国であった。
安全保障理事会は,国際平和と安全の維持についての主要な責任を認められており,この点で総会よりも優越した地位に立つ。国家間の紛争などで平和と安全を危うくするものに対して,安全保障理事会は国連憲章第6章の下で,事実の調査,必要な手続や方法の勧告,適当な解決条件の勧告を内容とする平和的解決をはかり,さらに第7章では,平和に対する脅威や平和の破壊,侵略行為の発生を認定し,関係当事者に対して,事態の悪化を防ぐための必要な暫定措置を要請し(40条),外交的,経済的断交などの非軍事的強制措置(41条),または陸・海・空の兵力による軍事的強制措置の発動を決議し,加盟国にそれへの参加を求めることができる。もっとも軍事的措置に参加する兵力の提供については,提供兵力の数や種類などを定めた特別協定によることになっているが(43条),この協定が不成立のために,安全保障理事会への加盟国の軍事的協力は義務ではない。
理事会の表決方式は,手続事項とそれ以外の事項とに分かれ,前者は,いずれかの9理事国の賛成投票によって決議は成立するが,後者の場合は,9理事国以上の賛成だけでなく,その中に常任理事国全部の同意投票が含まれていなければならない。したがって常任理事国が1国でも反対すれば,たとえ他の理事国全部が賛成しても,決議は採択されないことになり,このような常任理事国の権利を拒否権と呼んでいる。ただし,五大国の棄権や投票不参加は拒否権とならない慣行が成立している。安全保障理事会は,大国を中心とする小規模な会議体であり,問題が発生すればただちに会議を開く体制になっている。したがって,総会が国際世論を形成する場としての重要性を加えた今日においても,政治的に重要な紛争や事態を処理するのは,多くの場合,安全保障理事会であり,国連の運営上,総会とならぶ中心的な機関となっている。
→国際連合
執筆者:香西 茂
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国際連合の主要機関の一つ。国際平和と安全の維持に関して主要な責任を負わされている。このため、有事即応の態勢に置かれる。おもな任務は、平和を破壊するに至るおそれのある紛争または事態を平和的に処理し、かつ平和への脅威、平和の破壊、または侵略行為などに対し勧告をし、または強制措置を決定することである。これに関連して、軍備規制計画の作成、国際司法裁判所の判決の履行、地方的紛争の地域的処理の奨励、地域的強制行動の許可、戦略地区の監督などを行う(国連憲章24条1、2項)。さらに、総会と共同して、加盟承認、除名、権利停止、事務総長の任命などを管掌する。
構成は、5常任理事国と10非常任理事国の計15か国からなる。常任理事国は、中国、フランス、ロシア、イギリス、アメリカの五大国である。非常任理事国は、総会が毎年半数を選挙し、任期は2年、再選は許されない(23条1、2項)。総会での選出基準は、第一に国連の目的に対する貢献度、第二に衡平な地理的配分であるが、実際には第二の基準に比重がかけられてきた。表決は、手続事項については単純に9理事国の、非手続事項については「常任理事国の同意投票を含む」9理事国の賛成投票によって行われる(27条2、3項)。後者の場合、常任理事国が反対投票すれば決議が成立しないことから拒否権というが、逆に有効に「決定」(強制措置を含む)が行われれば、すべての加盟国に対し拘束力をもつ(25条)。このように、安全保障理事会は強制措置の決定を頂点に、いちおうは強力な権限を有するが、その実効性は究極において大国の一致にかかる仕組みである。
安全保障理事会は、当初5常任理事国と6非常任理事国の計11か国で発足した。しかし、非植民地化に伴う加盟国の増大とともに、1963年国連憲章改正により非常任理事国を10か国に増員し、現行体制となった(1965年発効)。冷戦後は、国際情勢の変化と加盟国のさらなる増大にかんがみ、非常任理事国のみならず常任理事国の増員を含む安全保障理事会の拡大が国連改革の重要課題となっている。
[内田久司]
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(最上敏樹 国際基督教大学教授 / 2007年)
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国際連合の主要機関。国際平和と安全の維持の主たる責任を負う。侵略行為の存在を決定し,軍事的手段を含む平和回復措置の方法を決定する。常任理事国の米・英・仏・ソ(現,ロシア)・中の5カ国と,2年任期で総会から選出される非常任理事国10カ国(1965年の憲章改正までは6カ国)で構成される。第2次大戦時の五大国であった常任理事国には拒否権が与えられ,新規加盟申請や憲章改正などに関しては常任理事国の全会一致を要する。
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