国連大量破壊兵器廃棄特別委員会(読み)こくれんたいりょうはかいへいきはいきとくべついいんかい(その他表記)United Nations Special Commission on Iraq

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

国連大量破壊兵器廃棄特別委員会
こくれんたいりょうはかいへいきはいきとくべついいんかい
United Nations Special Commission on Iraq

湾岸戦争後の1991年4月の国連安保理停戦決議687(湾岸戦争停戦決議)に基づいて設立された委員会で、イラクから化学兵器生物兵器、射程150キロメートル以上の弾道ミサイルなどの大量破壊兵器を排除することを目的とした。略称UNSCOM。同委員会はオーストラリアのR・バトラー国連大使を委員長(1999年6月末辞任)として、生物、化学兵器、ミサイルの専門家20人で構成された。このほかに多国籍査察官100人がおり、半年ごとに国連に作業の進捗(しんちょく)状況に関する報告書を提出した。1998年末時点でまとめた報告書によると、イラクはマスタードガス砲弾550発、神経ガスVX1.5トンなどの化学兵器、2万6000リットルの炭疽菌(たんそきん)を培養するに十分な酵母を保有していたという。イラクは同委員会の活動がアメリカ寄りであるとの批判を繰り返し、1998年12月にはバース党本部への査察を拒否したことから、米英両国が同年12月16日に砂漠のキツネ作戦を発動した。しかし1999年1月に同委員会がイラク国内に設置した監視機器のなか米中央情報局CIA)向けの盗聴機器が設置されていたことが明るみにでて、同委員会の中立性が問題となった。1999年12月に活動を停止し、国連監視検証査察委員会に引き継がれたが、同委員会もイラクのフセイン政権の崩壊により役割を終えた。

[宮岡千代道]

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