日本大百科全書(ニッポニカ) 「国際競争力報告」の意味・わかりやすい解説
国際競争力報告
こくさいきょうそうりょくほうこく
The Global Competitiveness Report
世界の国・地域がどの程度の産業競争力をもつかをまとめた報告書。スイスに本拠を置く非営利団体、世界経済フォーラム(WEF:World Economic Forum)が1979年から毎年発表(新型コロナウイルス感染症〈COVID(コビッド)-19〉流行時は休止)している。WEFランキングともよばれる。とくに、報告書に盛り込まれた国際競争力指数4.0(GCI4.0:Global Competitiveness Index 4.0)は、スイス国際経営開発研究所(IMD)の世界競争力ランキング(IMDランキング)と並んで、国際的に関心が高い。国際競争力指数4.0は、情報通信技術(ICT)で産業を革新するインダストリー4.0に即した指数であり、各国・地域の、(1)制度(公的機関)、(2)インフラストラクチャー、(3)ICT適用、(4)マクロ経済安定性、(5)健康、(6)技術、(7)製品市場、(8)労働市場、(9)金融システム、(10)市場規模、(11)ビジネス・ダイナミズム、(12)イノベーション能力、という12分野103指標を基に100点満点で算出している。2019年版(対象141か国・地域)の上位をみると1位シンガポール(84.8点)、2位アメリカ(83.7点)、3位香港(ホンコン)(83.1点)。日本は6位(82.3点)で、特許出願件数や研究開発投資額は高評価だが、労働市場の多様性などの評価が低かった。なお、国際競争力指数4.0は、イノベーション4.0に即して、2018年から評価項目が大幅に改定されており、長年トップを競ったスイス、フィンランドが順位を下げた。また、新型コロナウイルス感染症が流行した2020年には、ランキングを中止し、感染症流行による危機から経済を回復させるための報告書特別版を発表した。
[矢野 武 2023年8月18日]