順位(読み)ジュンイ(英語表記)dominance hierarchy

デジタル大辞泉 「順位」の意味・読み・例文・類語

じゅん‐い〔‐ヰ〕【順位】

一定の基準によって上下あるいはあとさきの関係で順に並べられるときの、それぞれの位置。「順位をつける」「順位が下がる」「優先順位
[類語]順序順番序列席順配列席次着順語順手順道順オーダー

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精選版 日本国語大辞典 「順位」の意味・読み・例文・類語

じゅん‐い‥ヰ【順位】

  1. 〘 名詞 〙 順序に従ってきめた位置・地位。順番。
    1. [初出の実例]「遺産相続を為すべき者の順位」(出典:民法(明治二九年)(1896)九九六条)

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改訂新版 世界大百科事典 「順位」の意味・わかりやすい解説

順位 (じゅんい)
dominance hierarchy

動物の複数個体が集合したときに,個体間に優劣関係が現れることがある。この優位・劣位の序列がある程度の期間持続するとき順位といい,順位を制度化している動物の社会を順位制社会と呼ぶ。順位は複数個体が同一の要求物(例えば,すみか,食物,配偶者など)をめぐって競争することから起こるので,飼育下や餌づけ下で,狭い空間へ激しい集中が起こった場合にとくに強く現れやすい。実験条件下では無脊椎動物を含めて多くの動物で順位が報告されているが,集団のメンバーどうしが互いに個体識別できる知的能力がなければ,本来の意味の順位は成立しないので,野外で順位が認められるのは一部の鳥類と哺乳類だけである。

 一般に野生の状態では劣位の個体は優位個体との出会いを避けるので,優劣関係がはっきりみられることは少ないが,鳥類ではつつきの順位をみたり,餌づけされたニホンザルニホンジカの場合には,2個体の中間にそれぞれミカンやせんべいを投げ与えて,どちらが先に取るかをみる,いわゆる〈ミカンテスト〉や〈せんべいテスト〉などで明らかにすることができる。ニホンザルではミカンテストの結果得られた順位が,食物といった直接的な要求物のないところでも,優位個体の劣位個体に対する馬乗り行動(マウンティングmountingともいう)によって常時確認されている。

 順位には,群れが移動して行くにつれ,群れの占める位置によって構成メンバー間の順位が変わるものと,どこに移動しようと不動のものがある。前者はステラーカケスやコガラシジュウカラの冬季群にみられ,群れが移動し,その群れのある個体の前繁殖期のつがいなわばりの付近に行くと,メンバーの中でその個体の相対的順位が上がる。この場合は順位がなわばりという場所に結びついている。

 後者の有名な例はニホンザルである。しかしこの場合には,餌場で餌を与えて極度に集中させた結果,順位が野生群でよりも増幅強調されすぎているのではないかという見方もある。

 順位は主として闘争(実際の戦いまたは儀式的なディスプレーによる)によって決められるが,一度優劣が決まると,一般に以後は実際の戦いはみられなくなる。順位が決定される要因としては,体の大きさ・体重・年齢・性・角やたてがみなど,直接に身体的強さを左右するものと,親の順位,定着の順序,はてはニホンザルでのように群れ内での一種の〈人気〉のような,その個体の身体的力量とは直接関係なさそうなものまである。また,ニワトリハトネズミなどでは,性ホルモンを投与すると順位が上がることが実験的に明らかにされている。

 鶏舎内のニワトリや餌づけされたニホンザルでは,上位の個体ほど食べる餌の量が多く,体重がよく増え,残す子どもの数も多い。またゾウアザラシでは全体の6%にしかあたらない優位個体が,88%の雌を妊娠させるという報告がある。同様のことはキジオライチョウやある種のコウモリでも知られている。

 こうした不平等機構は,その種社会の中で要求物を獲得するための闘争的な側面としかみなせないのであろうか。ニワトリでは順位が確立していない群れほどつつき合いの起こる頻度が高く,群れ全体としての産卵数も低下する。ニホンザルでは餌場や休息場で平穏なときには,ただいばり散らしているように見える上位個体も,外敵の排除というような危険の多い行動をみずからとるという。このように順位によって個体間の調整が行われて,それが集団内での共存を可能にしている面もあり,順位はなわばりと並んで,動物の種社会を統合する二大機構の一つと考えることもできる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「順位」の意味・わかりやすい解説

順位
じゅんい

動物の集団のなかの個体間における優位と劣位の序列のこと。ある程度の持続性と安定性をもち、場所によって影響されない関係に限っていわれるのが普通である。順位は、体の大きさ、性、年齢などによって規定され、社会生活において個体の摂食、成長、繁殖などに大きく影響することが知られている。相対的に順位の高い個体を優位者、低い個体を劣位者とよび、その相互関係のあり方によって順位はいくつかの型に分けられることがある。このうち、劣位者が優位者をけっして攻撃することなくすべての個体が直線的な序列をつくる場合を絶対的順位、劣位者が優位者を攻撃したり、たとえばA>B>C>Aといった三すくみの関係がみられる場合を相対的順位、また最上位の一個体を除いて、ほかは優劣のはっきりしない場合を独裁制とよぶ。明確な優劣関係は、その当事者どうしが互いに知り合っていたり、一見して力の差が明らかである場合にみられるものである。また、一つの群れのなかの個体どうしが、互いに認知しあった優劣関係に基づいて生活し、むだな争いを避けている場合、とくにその群れには順位制があるという。順位は最初、1922年にシェルデラップ・エッベT. Schjelderup-Ebbeがニワトリのつつきの順位として明らかにして以来、アシナガバチ類、魚類、爬虫(はちゅう)類、鳥類、哺乳(ほにゅう)類などで広くみいだされている。

[片野 修]

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百科事典マイペディア 「順位」の意味・わかりやすい解説

順位(動物行動学)【じゅんい】

同種の動物個体間で一定期間にわたって持続する優劣関係。なわばりと並んで重要な動物の社会維持機構。最も単純な形はT.シェルデラプ・エッベが発見した直線的な順位関係(つつきの順位)であるが,実際には一頭の雄だけ(α雄)が優位になる独裁制まで,さまざまな形がある。一般に,野生状態でよりも,限られた空間内での実験条件下で順位が顕著になる。
→関連項目レック

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知恵蔵 「順位」の解説

順位

動物集団の個体間に見られる優劣関係。T.シェルデルプ=エッベがニワトリの個体間のつつきの順位として見いだしたのが最初で、その後、多くの動物群に見られる普遍的な関係であることが明らかになった。順位はつねに直線的とは限らず、三すくみ状態の順位関係が見られる場合もある。集団の最優位個体はアルファ個体、第2位はベータ個体などと呼ばれる。アルファ個体以外の、個体間に順位関係が見られないものを独裁制と呼ぶが、繁殖時にハレムをつくるゾウアザラシなどは、一種の独裁制とみることができる。

(垂水雄二 科学ジャーナリスト / 2007年)

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