化学辞典 第2版 「塩化メチル水銀」の解説
塩化メチル水銀(Ⅱ)
エンカメチルスイギン
methylmercury(Ⅱ) chloride
chloromercurimethane.CH3HgCl(251.08).クロロメチル水銀ともいう.無水酢酸と過酸化水素から調製した (CH3COO)2 に酢酸水銀と塩化カルシウムを加え,酢酸中で加熱して合成する.白色の結晶.融点172 ℃.水に対する溶解度は常温で5000 ppm.アルキル水銀の一種で,無機水銀に比べて体内に蓄積されやすく,中枢神経などに作用して高い毒性を示す.1950~1960年代に熊本県水俣湾沿岸地域や新潟県阿賀野川流域で発生した水俣病の原因物質でもある.いずれも,アセチレンからアセトアルデヒド製造時に触媒として使われた無機水銀HgSO4から生成したものと考えられている.環境基準では,公共用水域において検出されてはいけないとされており,測定には高感度のECD(電子捕獲)法検出器をもつガスクロマトグラフィーが使用される(検出限界0.5 ppb).LD50 30 mg/kg(マウス,経口).[CAS 115-09-3]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報