日本大百科全書(ニッポニカ) 「多声性」の意味・わかりやすい解説
多声性
たせいせい
polyphony 英語
multiphony 英語
Mehrstimmigkeit ドイツ語
音楽において音を同時にいくつか響かせることを基本とする構成原理。平行歌唱・演奏の場合、三度ないし六度の音程で調和させることが、ヨーロッパ、オセアニア、マダガスカル島などで伝統様式の重要な技法として使用されている。四度・五度の平行は、ヨーロッパ中世やアフリカに例がある。ドローン技法は、一声部が一つの音高を保ち、他の声部が旋律を自由に展開するもので、アジアとヨーロッパに広くみられる。ハーモニー(和声)は、和音効果を次々と展開する方法で、その極みの一つの現れをヨーロッパ近代の機能和声法にみることができるが、その一方で、これとは異なる法則で和声を駆使する例を他の諸民族にみいだすことができる。ヘテロフォニーは、同一旋律の異型を同時に演奏するアジアに典型的な技法で、近世邦楽もその例の一つである。ディスフォニーは、同一旋律を何拍かずらして模倣させたり(カノンなど)、まったく異なる旋律群を同時に対比させたりするもので、ヨーロッパ(対位法)や東南アジアに多い。
[山口 修]