2音間の高さの隔たりをいう。その現れ方によって、和声的音程(同時に響く場合)と旋律的音程(順次に響く場合)がある。音程の表し方として一般的に用いられているのは、半音と全音に基づく七音音階上の段階の数で示す西洋の方法で、単位は度を用いる。ただし、半音より狭い音程が重要な意味をもつインド、西アジアなどの音楽を記述するときには、微分音という用語が必要になる。以下ここでは微分音を除外して述べる。
[南谷美保]
ある音と同一段階にある音は同度、または1度の関係にあるとし、二つの段階にある音は2度、三つの段階ならば3度というように以下8度(オクターブ)まで達する。オクターブを超える音程(9度、10度……)を複合音程、それ以内を単音程というが、複合音程は1回ないし数回オクターブ音程を差し引いて、単音程に還元して考えることが多い。七音音階に基づく音程表示は、七音音階に基づかない音楽、および西洋以外の諸民族の音楽にも便宜的に用いられている。
(1)音程の種類 以下、単音程の範囲で述べる。同じ度数で示される音程でも半音の有無によって違いが生じるが、これを完全、長、短という名称をもって区別する。自然倍音列の各倍音間に現れるすべての音程は、完全1度、長・短2度、長・短3度、完全4度、完全5度、長・短6度、長・短7度、完全8度であり、完全音程と、長・短音程の二つの系列に分けられる。これらに、全音階中に現れる増4度と減5度を加えた音程を全音階的音程といい、増4度と減5度以外の増音程と減音程、重増音程および重減音程を半音階的音程という。
(2)音程の名称の変化 完全音程と長・短音程の2系列を中心とし、そこから半音の幅で増減することによって音程の名称が変化する。すなわち半音広がれば増音程、狭まれば減音程となる。なお、長音程が半音狭まると短音程となり、さらに半音狭まると減音程となる。
(3)音程の転回 音程をなす2音の一つを反対側へ1オクターブ移すことによって得られる音程を転回音程といい、これと原音程との度数の和はつねに9である。
(4)音程の協和 協和とは同時に鳴る音がよく調和して響くような関係にあることをいい、調和しない音程関係を不協和という。音程の協和関係は、完全協和音程(完全1度、完全8度、完全4度、完全5度)、不完全協和音程(長・短3度、長・短6度)、不協和音程(長・短2度、長・短7度と、すべての増・減音程)の3種に定義される。
[南谷美保]
(1)音程比によるもの 一つの音程をなす2音の振動数の比を最簡約した分数比(低音が分母、高音が分子)で表すもの。
(2)音程値によるもの 音程比の対数を求めて、それを比例によって秩序づけた単位(音程値)で示すもの。「対数値」は、音程比の対数を1000倍し、3桁(けた)の整数で示すもの。「サバール値」は、サバールを基準として示すもの。1サバールとは、対数値の1オクターブ=301.03の近似値をとって1オクターブ=300とした値をいう。「ミリオクターブ値」は、オクターブの値を1000とし、他の音程はこれらと対数値との比例によって算出するもの。「セント値」は、エリスの考案したもので、今日もっとも広く用いられているもの。十二平均律の半音を100とする。「日本式音程値」は、1オクターブを6とし、全音を1、半音を0.5とするもので、音響学者田辺尚雄(ひさお)の考案による。「角度値」は、1オクターブを360度とし、音程の値を角度で示すものである。
[南谷美保]
二つの音の高さのへだたりを音程といい,同時的に響く2音のへだたりは和声的音程,順次的に響く2音のへだたりは旋律的音程と呼ばれる。ふつう音程を計るには,西洋音楽の基礎となっている7音音階(全音階)の各段階をもとにして〈度〉という単位を用いる。すなわち,同一段階の2音は同度または1度,二つの段階にまたがる2音は2度というふうに呼ぶ。8度にはとくにラテン語から来た〈オクターブ〉という言葉が用いられる。全音階の内部に現れる音程を全音階的音程といい,半音階的変化によって生じた音程を半音階的音程と呼ぶ(図)。音程を形づくる2音の響きにはよくとけ合って聞こえるものと,とけ合わずに離れ離れに聞こえるものとがある。前者は協和音程,後者は不協和音程と呼ばれる。ふつう音楽上では完全1度,8度,5度,4度および長・短の3度と6度を協和音程とし,その他のすべての音程を不協和音程としている。しかし,音楽理論上の協和の概念は歴史的に変化してきているし,また,上記の協和音程も音楽上,和声的には協和音程とされない場合もある。
→音律
執筆者:渡 鏡子 音程を計る単位は個々の文化の音組織によって異なる。比較音楽学で今日広く用いられている音程の尺度セント法は西洋近代の12平均律の半音を100セントと見なし,これを基礎としているが,これはあくまでも便宜上のことにすぎない。半音を2等分(すなわち1オクターブを24等分)した4分音を音程の最小単位と考える音組織も存在する。そしてこれを基にして3/4音(つまり日本でいう1律半)や7/4音(すなわち3律半)といった特殊な音程も西アジアの音楽ではごく普通に実用される。前者は洋楽の短2度と長2度の中間の音程,すなわち〈中立2度〉,また後者は短3度と長3度の中間つまり〈中立3度〉であり,これらが〈中立音程〉と呼ばれることもある。また古代インドでは,1オクターブを22等分し,その最小単位(シュルティ)を二つ,三つまたは四つ組み合わせたもの(つまり2/22,3/22,4/22の3種)を基本的な音程として音階を構成する。中世イスラム世界では,1オクターブを12のピタゴラス・リンマと5のピタゴラス・コンマ,つまり合計17律に不等分分割し,これらの組合せ(例えば,半音は1リンマ,大全音は2リンマ+1コンマ)で7音音階が構成されている。
音程は伝統的にリュートやモノコードの指盤上で弦の長さとして計測され,実験されることが多かった。したがって,諸音程に中世アラブ音楽におけるように,ウードの指盤上で弦の勘所(かんどころ)を押さえるべき左手の指の名称(例えば,サッバーバ〈人差指〉,ザルザルのウスター〈中指〉など)が冠せられていることもある。また古代中国では,音程は律管の長さとして表示された。物理学では音程が2音の振動数の比(音程比)として表示される。
執筆者:柘植 元一
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