化学辞典 第2版 「多重パルスNMR」の解説
多重パルスNMR
タジュウパルスエヌエムアール
multi-pulse NMR
広い意味では,二つ以上のパルスを使うNMRをいう.通常は,多数のパルスを用い,同種核間の双極子-双極子相互作用を抑制して固体試料のNMRスペクトルの高分解能化をはかる方法をさす.1H や 19F のように,磁気モーメントが大きくて同種核間の双極子-双極子相互作用が大きい場合に使用する.パルス系列として,HWW-4,MREV-8,BR-24などがよく知られている.記号は考案者の頭文字,後の数字は1サイクルに含まれるパルスの数を表しており,後者ほど高い分解能が得られる.マジック角回転と併用した方法はCRAMPS(combined rotation and multiple pulse spectroscopy)といい,多重パルスで同種核間の双極子-双極子相互作用,マジック角回転で化学シフトの異方性と異種核間の双極子-双極子相互作用を消去して高分解能スペクトルを得る.多重パルス法では,パルスの位相や強度が正確にそろっている必要があり,そのために装置を精密に調整しなければならない.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報