大倭二十四孝(読み)やまとにじゅうしこう

改訂新版 世界大百科事典 「大倭二十四孝」の意味・わかりやすい解説

大倭二十四孝 (やまとにじゅうしこう)

仮名草子。24巻12冊。浅井了意作といわれる。1665年(寛文5)刊。後印本に98年(元禄11)版や無刊年版などのほか,菱川師宣の手になる挿画を加えた別版もある。元の郭居敬の撰述にかかる《二十四孝子選》が,御伽草子二十四孝》として翻訳されたり,江戸幕府儒教をその指針とした文教政策が浸透してゆく一環として孝子譚が尊ばれ,一つのブームとなり《孝行物語》《親子物語》などの仮名草子が刊行されるにいたった。その中で中国の二十四孝に対し,中世説話を粉本とした日本の二十四孝を集録したものが本書である。その創意工夫は新たな試みではあるが,仮名草子特有の啓蒙教訓的要素が色濃く残る作品である。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の大倭二十四孝の言及

【孝】より

… 近世に入って,家の制度が確立し,儒教が教学の中心に据えられると,孝は道徳の根本として取り上げられるようになった。母への孝行に徹した中江藤樹は,孝を基本とする独特の教えを説いたが,孝の強調の中で,浅井了意の《大倭二十四孝(やまとにじゆうしこう)》をはじめ,孝を中心とする数々の教訓本があらわれた。幕府や諸藩は孝子の表彰を盛んに行い,教化に努めたが,他方で主君に対するが強調されるようになると,忠は孝に優先すると説かれることになった。…

※「大倭二十四孝」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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