大学事典 「大学拡張運動」の解説
大学拡張運動
だいがくかくちょううんどう
イギリスにおいて,大学教育の機会と恩恵を地方産業都市の住民や幅広い階層(女性など)に広げようとする運動。1873年,ケンブリッジ大学トリニティ・カレッジのフェローであったジェームズ・スチュアート,J.の提唱により始められた。大学の教師たちが地元の要請に応えるかたちで地方に赴き一連の講義を行った。地方を巡回することから「逍遥する大学」(peripatetic university)と呼ばれた。ケンブリッジに続いてロンドン大学(1876年),オックスフォード大学(1878年)もこれに倣い,運動は急速に広がっていった。シェフィールド,ノッティンガム,ブリストルなど19世紀後半に地方産業都市に設立された市民大学(civic university)の前身のいくつかは,この運動の中から誕生したものである。また,1908年に労働者教育協会(Workers' Educational Association: WEA)とオックスフォード大学との共同で始められたチュートリアル・クラスは,この運動の経験を踏まえ労働者成人に対してより高度で質の高い大学教育を提供しようとするものであった。
著者: 安原義仁
出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報