オックスフォード大学(読み)おっくすふぉーどだいがく(英語表記)Oxford University

日本大百科全書(ニッポニカ) 「オックスフォード大学」の意味・わかりやすい解説

オックスフォード大学
おっくすふぉーどだいがく
Oxford University

イギリスのオックスフォード市にある同国最古の歴史を誇る大学。ケンブリッジ大学とともに「オックスブリッジOxbridge」と称される。

[松垣 裕]

歴史

大学の成立年代は明確ではないが、1133年、パリ大学から神学者ロベール・ピュランが来講したのを大学の起源とすることが多い。ついで1168年ごろ、パリ大学を脱出したイギリス人学生が帰国してここに集まり、一方ヘンリー2世の勅令で海外留学を禁止された学生も加わって大学の基礎は固まった。この世紀の末、大学は全キリスト教国共通の学位の認定権を取得し、13世紀初めには「ローマ教会の第二の学校」として、パリ大学に次ぐ地位を与えられた。この時代の大学の発展は、ドミニコ派、フランチェスコ派、カルメル派、ベネディクト派など各修道会士の来学に負うところが大きい。最初の学寮(カレッジcollege)は1249年に創設されたが、1264年在俗聖職者の教育のためにつくられたマートン学寮がその後の学寮制度のモデルとなった。中世オックスフォード大学名声を高めた人に、ロジャー・ベーコン、ドゥンス・スコトゥスらの哲学者や宗教改革の先駆者ジョン・ウィクリフがいる。ルネサンスの新学問は、人文主義者エラスムスやトマス・モアらの指導によって興隆した。17世紀前半総長に就任した大司教ロードは、学位試験制度を改正し制服を定めたほか、多数の教授職を新設し、また大学出版部を創立するなど、大学の発展に貢献した。産業革命後の社会変化に対応する大学の機構改革は19世紀後半以降進展をみせ、1877年には自然科学部門の充実が図られた。

[松垣 裕]

現況

オックスフォード大学はそれぞれ独立の自治団体であるカレッジ(学寮)とホール(下宿)からなる学寮制の大学であり、カレッジとホールの連合体を総称してオックスフォード大学とよんでいる。カレッジないしホールは、学寮長(マスター、プリンシパルプレジデント、プロボスト、ウォードン、ディーンなどその名称はさまざま)、フェローfellowとよばれる教師、それに学生で構成され、それぞれ独自の建物、基本財産、運営組織を有している。2001年現在、カレッジの数は39を数える。このうち七つは大学院レベルの学生のみを受け入れている。かつては男子カレッジと女子カレッジがあったが、1974年からセント・ヒルダズ・カレッジを除いてすべて共学となった。またケロッグ・カレッジは聴講生のみを受け入れて継続教育を行っており、オールソウルズ・カレッジはフェローのみで構成されている。六つあるホール(Permanent Private Halls)はキリスト教の各教団(宗派)によって設立されたもので、宗教的色彩を強くもつ。

 大学の教育と運営はカレッジを中心に展開される。カレッジは学生を選抜し(カレッジないしホールの一員に選抜されることなく大学の一員になることはできない)、部屋と食事を提供し、生活と教育の基盤となる。カレッジの建物には教師や学生の居室、食堂、コモンルーム(共同談話室)、図書室、礼拝堂、教室などがあり、四角い中庭を囲んで配されている。カレッジはクリケット場やボートハウスなど各種のスポーツ施設ももっている。そして、カレッジでの教育の中心となるのがチューターtutor(フェローが担当)による個人指導(チュートリアルtutorial)である。

 一方、カレッジ間の調整機構でもあり大学全体の中央組織でもあるユニバーシティ(全学)は、オックスフォード大学が提供する学位コース等のカリキュラムの枠組みを定め、試験を実施し学位を授与する。ボドリアン図書館(1602)やアシュモール博物館(1683)をはじめクラレンドン研究所などさまざまな施設を備え、全学を通じた教育と研究に便宜を図る。16を数える学部facultyや講座の運営もユニバーシティによるものである。組織としてカレッジとユニバーシティは別個の存在であるが、オックスフォード大学の教師と学生のほとんどが、同時にいずれの組織にも所属している。

 1998年現在、学生数約1万6100人。その約4分の1は海外からの留学生で、その出身国は130か国以上に及んでいる。大学院レベルの学生数は約5000人で全体の3分の1弱を占める。教職員数約7700人。

[安原義仁]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オックスフォード大学」の意味・わかりやすい解説

オックスフォード大学
オックスフォードだいがく
University of Oxford

ロンドン北西約 100kmのテムズ川上流のオックスフォードにあり,イギリス最古,世界でも最も有名な歴史の古い大学。私立,共学制で,ケンブリッジ大学と並んで,出身者がイギリス各界の指導者のほとんどすべてを占める。起源は 12世紀なかばまでさかのぼり,パリ大学を模範として形成され発展した。当初は神学,法学,医学,基礎教養の4学部をもった。貧しい学生のために寄付金によって寄宿舎が設けられ,これがカレッジに発展した。現在はベーリオール (1263) ,マートン (64) ,ニュー (1379) などのカレッジにより構成されている。学生はそれぞれ伝統と特色をもつこれらカレッジのどれか1つに属して,そこで寄宿生活をおくりながら,やはり各カレッジに属する教官から1対1の指導 (チュートリアル・システム) を受け,必要に応じて,市内各地の施設で行われる講義に出かける。 1160年代にはまとまった形を整え,特に神学や人文科学に特色のある大学とみなされるようになり,13世紀以降イギリス王室と深い関係をもち,イギリス史上で,政治的,宗教的,文化的諸問題に密接にかかわってきた。 19世紀なかばより自然科学や社会科学各分野の充実,一部特権階級から国民各層への門戸の拡張などの改革がなされつつ現在にいたっている。大学財政も,基本財産,寄付金の比重が減り,政府交付金が 65%にも及ぶほどの変化をみせている。教員数約 1500名,学生数約1万 5500名 (1997) 。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

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