一人もしくは少人数の学生に対し,チューター(tutor,tutorial fellow)と呼ばれる教師が行う,独立思考の訓練に指向した個別指導。スーパービジョンともいう。オックスフォード大学やケンブリッジ大学のカレッジ(イギリス)において,創設間もない頃から年長のフェローが若い者の勉強をみたり,生活上の指導を行っていたことは,マートン・カレッジの初期の規約等から明らかだが,中世大学の教育の中心は大学の教師が行う講義や討論であった。オックスフォード大学のニュー・カレッジの創設者,ウィカムのウィリアム(William of Wykeham,1324-1404)は,若い学生に指導を行うシニア・メンバーに特別の俸給を支払うことを規約に定めた。このニュー・カレッジの方式は2大学で急速に広まり,多くのカレッジはフェローの中からチューターを選任し,学生の勉学だけでなく,大学生活の指導全般にあたらせた。寮内での規律ある学業生活はエリート養成の場として為政者の信頼を得,新たな寄付や自費生をひきつけるようになった。慈善施設であった学寮は大学教育の中心となり,イングランドに特徴的な学寮制大学として発展を遂げた。
著者: 中村勝美
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