朝日日本歴史人物事典 「大村福吉」の解説
大村福吉
平安前期の医官。『続日本後紀』承和2(835)年10月4日条に記事があり,それによれば,丹波国の人で,当時は右近衛医師・外従五位下の位にあり,同族の者と共に計5人が紀宿禰姓を賜った。武内宿禰の支流であるという。また,瘡(外科・皮膚科疾患)の治療術に精通すること他の医師の追従を許さず,仁明天皇の寵愛を得て居宅を賜り,命を受けてその治療の口訣(口授の秘伝)により『治瘡記』を選したとある。この書は日本最古の外科治療書と目されるが,古くに失われて今日その内容をうかがうことはできない。
(小曾戸洋)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報