天佑俠(読み)てんゆうきょう

改訂新版 世界大百科事典 「天佑俠」の意味・わかりやすい解説

天佑俠 (てんゆうきょう)

日清戦争の際,朝鮮で活動した玄洋社系の団体。1894年,東学農民軍が蜂起すると,これを日清開戦の導火線にしようとする軍部,玄洋社の意をうけて鈴木天眼,内田良平らが渡海し,すでに釜山居留地でアジア経綸を語らっていた田中侍郎,武田範之らのグループに合流した。彼ら十数人は天佑俠を名のり,農民軍の支援を意図して6月下旬に釜山を出発,全羅南道淳昌で農民軍の幹部と接触した。しかし,総大将全琫準と盟約し共同作戦をとったという《玄洋社史》等の記述はきわめて疑わしい。主観的な意図はともかく,彼らの行動が侵略尖兵としての役割を担うものだったことは動かしがたい。開戦後には,彼らの大部分は日本軍のもとで状況偵察などの任務にあたった。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の天佑俠の言及

【内田良平】より

…31年大日本生産党を結成し,その総裁となってファシズム運動の先頭に立ち,神兵隊事件国体明徴問題などに関与しつつ,満蒙独立運動を推進した。なお,1894年天佑俠という団体をつくり,朝鮮の甲午農民戦争(東学党の乱)に参加し,その指導者全琫準と日韓合邦の宿縁を結び,同時に日清戦争をひきおこすのに尽力したとの伝えがあるが,信憑性は極めて疑わしい。大アジア主義【中塚 明】。…

※「天佑俠」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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