日本大百科全書(ニッポニカ) 「天竜寺青磁」の意味・わかりやすい解説
天竜寺青磁
てんりゅうじせいじ
中国浙江(せっこう)省の竜泉窯(りゅうせんよう)で焼造された青磁の一様式。天竜寺の呼称は、日本の室町幕府が明(みん)国と取り決めた勘合貿易により、天竜寺造営のために派遣した貿易船がこの種の青磁を大量に輸入したためにつけられた名称であると伝えられる。大盤、大壺(つぼ)、大扁壺(へんこ)、大梅瓶(めいぴん)、大花瓶など大作が多く、砧(きぬた)青磁に次ぐ品質で、光沢のある濃い緑色の青磁釉(ゆう)がどっぷりとかけられた堂々たる青磁である。景徳鎮(けいとくちん)窯の染付(そめつけ)磁器と同じ様式を備え、元代ならではの時代色を強烈に表現した天竜寺手(で)の青磁は、元代後期の14世紀から明中期の15世紀まで盛んに焼造された。
[矢部良明]