中国江西省の北東部,昌江上流にある中国第一の窯業都市。古くは立馬山といい,東晋時代に新平鎮となり,唐代には昌南鎮と称したが,宋の景徳年間(1004-07)に景徳鎮となった。製陶の起源は古く,漢代とも西晋代(265-316)ともいわれ,また南朝陳の至徳年間(583-86)勅命をうけて製陶したとも伝える。白磁を焼くようになったのは唐代からで,現在知られている最古の窯跡は唐末五代のもの,そこには青磁と白磁の破片が散乱している。宋代になると技術が急速に向上して,薄づくりのみごとな白磁(青白磁,影青)が量産され,海外輸出もはじまった。さらに元代には青花白磁(染付)の製作をはじめ,その製品は中国国内はもとより,東南アジア,インドから西アジア各地にまで送られた。
明代の初期,御器厰と呼ぶ政府直営の工場が置かれて,最高級の御用品が焼造された。青花とともに五彩(赤絵)も焼かれるようになり嘉靖年間(1522-66)にはとくに豪華なさまざまの磁器が,御器厰と民窯でつくられた。明代末期からヨーロッパへの輸出がさかんになり,清代前半にかけて大量の民窯青花・五彩磁器が送られ,ヨーロッパ陶芸に大きな影響を与えた。清の康熙年間(1662-1722)御器厰が再建され,臧応選,年希尭,唐英等のすぐれた監督官のもとで,新技術の開発と宋・明の名品の模倣が熱心に行われ,さまざまの精巧な磁器が生みだされた。明・清時代の最盛期の〈燃ゆる町〉景徳鎮は四大鎮(武漢,朱仙,仏山とともに重要な商工業都市)の一つとして栄え,〈夜ともなれば,恰(あたか)も全市火に包まれたる一巨邑を観る如き〉景観を呈したといわれる。しかし乾隆末年以後,御器厰の活動は沈滞し,また太平天国の乱等の清末の動乱によって景徳鎮は大きな打撃をうけ,製磁業はいちじるしく衰微した。中華人民共和国成立後,大工場による生産の向上と,研究所等による技術再現・開発がはかられ,往時の繁栄を取り戻しつつある。
執筆者:長谷部 楽爾
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中国、江西(こうせい)省北東部の地級市。2市轄区、1県を管轄し、1県級市の管轄代行を行う(2016年時点)。人口152万3329(2010)。古くから良質の陶土を産し水陸交通の便もよいことから陶工が住みついて発達し、初め昌南(しょうなん)鎮といった。583年、陳(ちん)朝に陶器を献上し、唐の初め陶玉という陶工が陶器を仮玉器(かぎょくき)と称して唐朝に献上してから、陶窯とよばれて有名になった。陶窯はまた地名にちなんで昌窯ともよばれた。11世紀初め、宋(そう)の御用陶器を製造したので、地名を当時の年号にちなんで景徳鎮と改めた。その後、金(きん)の侵攻で荒廃した華北から優れた陶工が来住したので、量・質ともに他窯を圧倒し、元代にも多くの逸品をつくり、明(みん)・清(しん)代には政府の専用工場である御器廠(ぎょきしょう)が置かれた。雍正(ようせい)・乾隆(けんりゅう)のころはその最盛期で、人口も40万に達し、数多くの製品が海外にも輸出され、ヨーロッパ各国で愛された。清末には需要過多のために粗品が多くなったが、昨今は近代工業都市的構想のもとに、陶瓷(とうし)研究所や陶器館を中心として、往年の盛況に戻りつつある。
[星 斌夫・編集部 2017年2月16日]
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中国江西省の都市。中国第1の陶磁器生産地で,唐代より知られた。宋元時代に発展し,明清時代には政府の専用工場である御器廠(ごきしょう)が設けられ,その名は世界的になった。青磁・白磁,染付(そめつけ),赤絵などの多くを産出した。
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[工芸]
明代においては,前代までと異なり,磁器が宮廷の祭器として用いられたこともあり,陶磁器が大いに発展した。明の陶磁器を特色づけるものは,染付,赤絵であったが,それらを製作した代表的な窯は,明初に官窯(御器廠)が置かれ,以後大いに栄えた景徳鎮窯(江西省)である。 明初の景徳鎮窯においては,おもに元代の染付が踏襲されていたが,宮廷用の祭器を製作するようになると,素材,技術とも改良され,宣徳年間(1426‐35)には〈明窯極盛時〉と後世評されたように,重厚な官窯の様式が完成した。…
※「景徳鎮」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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