翻訳|gloss
つやのある物体を見るとき,その物体の形や色など物体そのものを見るほかに,その物体に他の物体がうつった像も見ている。はっきりと強い像がうつるものは〈つや〉の高い物体で,像のうつらないものはつやのない物体である。つやと同じような意味の言葉に,〈光沢〉という言葉がある。写真の印画紙などのぴかぴかした感じのつやのあるものを光沢面と呼んだり,反対につやのないものを無光沢と呼んだりする。つやまたは光沢は,物体からの反射光の性質を表すものでなく,光の反射に関係した物体表面の性質を表すものである。それでは,つやと光沢はどのように異なるのであろうか。まったく光沢のない白と黒の図形を視野で重ね合わせて見ると,頭の中で生理的,心理的に合成された図形が光沢感を与えることがある。したがって,つやまたは光沢の現象は,単なる物理現象として解釈すべきものでなく,多分に心理的,生理的な要素をもっている。そこで物理現象と心理的または生理的要因の関係を明らかにするため,つやと光沢を使いわけることが多い。すなわち,物体表面の光の反射の性質を表す物理的性質を光沢と呼び,光沢に対応する物体表面の心理的または生理的感覚の属性を光沢感またはつやと呼ぶ。
光沢に関係する物体表面の反射の性質には,正反射(鏡面反射)の光量の大小および正反射像の鮮明さが含まれている。実際には,これらのものだけでなく,もっと多くのさまざまの物理量の組合せで決まる。すなわち,正反射光沢,シーン光沢,対比光沢,反射像の鮮明さ,ブルーム,表面の模様など物理量が複雑にからみ合っている。正反射光沢とは,物体の正反射方向の反射光強度,シーンとは反射面に対してぎりぎりに入射したときの正反射光の強度,対比光沢とは反射光と拡散光の強度比,反射像の鮮明さは照射光源のコントラストの高さ,ブルームとはつやの高い面のもやもやした感じ,表面の模様は目で認識できる程度の表面の凹凸の度合である。一般には反射光の強度が大きいほど光沢は高くなり,金属が高い光沢を示すのも,その表面の反射率が高く反射光の強度が大きいことに基づいている。金属の光沢を金属光沢というが,金属光沢のもう一つの特徴は,金や銅などの選択吸収をするものでは特有の色を与えることである。金属以外の物質の光沢についてはガラス光沢,樹脂光沢,真珠光沢など代表的なものの名で呼ばれているものが多い。
光沢をなんらかの方法で計測して,量的に表示したものを光沢度と呼んでいる。光沢度には,主として正反射光の強度に関係したものと正反射光の鮮明度に関係したものがあり,前者には鏡面光沢度,対比光沢度,後者には鮮明度光沢度がある。鏡面光沢度とは,正反射方向での反射強度で光沢を表す方法,対比光沢度は,拡散光強度に対する正反射光強度の比を用いる方法である。鮮明度光沢度は,表面に他の物体の像のうつる程度の面について,反射像をうつしてその鮮明度の良否を判定する方法である。
対象とする物体に応じて,光沢のもつ意味と重要性はいろいろと異なり,例えば金属の光沢は,表面の美観,表面の粗さなどの構造との関係,あるいは表面の処理工程の制御などの面から重要視され,また紙や織物でも光沢の有無が品質の判定に利用されることが多い。
執筆者:朝倉 利光
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