女性能楽師の躍進(読み)じょせいのうがくしのやくしん

知恵蔵 「女性能楽師の躍進」の解説

女性能楽師の躍進

国立能楽堂は、舞台に立つ機会の少ないプロの女性能楽師たちが出演する定例の会を企画し、第1回公演を2007年3月に開いた。今後は年1回の定期能にしていく。 男性の芸能として確立した能楽界では、長く「女人禁制」が通用した。女性能楽師の高音は、太く低く響く謡には向かないとされてきた。装束や面も今でこそ小ぶりな物もあるが、かつては女性には大きすぎた。しかし、戦後パイオニアである津村紀三子が能楽界に風穴を開け、1948年にはプロの能楽師集団の能楽協会に女性が初めて入会した。その後、女性能楽師の会員は増え、現在は能楽協会会員1400人余りのうち、女性会員は200人を超す。2004年には22人の女性能楽師が初めて重要無形文化財総合指定保持者に指定された。ベテランの富山禮子から最年少の鵜沢久まで、70代から50代の人々だ。 女性定期能を発足させた国立能楽堂側は「男性と一緒に能楽の未来を担ってほしい。女性能楽師が国指定を受けたのを機会に企画した」と狙いを話す。性差を超えて男性能楽師と伍して演じていくのか、女性特有の感性を生かした能に特色を発揮していくのか、課題は大きい。

(山本健一 演劇評論家 / 2008年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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