日本大百科全書(ニッポニカ) 「奶婚」の意味・わかりやすい解説
奶婚
ないこん
幼い男児に年上の女性を妻として配する、旧中国にみられた風習。一般に男子の初婚年齢は14、15歳で、3歳前後年上の妻をもつことをよしとする風があったが、奶婚の場合には10歳、ときにはそれ以上の年齢差があり、結婚当初妻が幼い夫を背負って子守りすることさえあった。「奶」の字は乳母(うば)を奶母というように乳の意味があり、嫁に相当する「媳(せき)」と組み合わせ「奶媳(ないせき)」と称することもある。
なぜこのような風習が行われていたかについては、十分成熟した女性を嫁として入れることにより、跡継ぎとなる男子をなるべく早く産ませること、すぐ使える女性労働力を確保すること、などがあげられる。これはまた同時に、家庭内における主婦やその後継者である嫁の役割が、その社会的地位の高低にかかわらず、重要であったことを反映していると思われる。
[末成道男]