童養媳(読み)とんやんしー

日本大百科全書(ニッポニカ) 「童養媳」の意味・わかりやすい解説

童養媳
とんやんしー

幼女をもらって育て、年ごろになって自分の息子の配偶者とする旧中国の風習。日本語読みでは「どうようせき」。もらう際に、少額ながら聘金(へいきん)(花嫁代償としての現金)を与える。1歳であっても花嫁として入家するので、養女と同時に婚入者としての地位をもち、以後両家は姻戚(いんせき)関係で結ばれる。しかし、成人し夫婦となるまでは、完全な妻として扱われるわけではなく、養親の葬式にはその家の娘と同じ喪服を着る。華北からの報告もないわけではないが、華南に多く、とくに福建省の中流以下の層ではこの形式が広くみられたという。目的としては、成人の花嫁では聘金が高額なのでそれを節約するためと、姑(しゅうとめ)が嫁のしつけを幼時から行うので嫁姑関係が円滑にゆくことのほか、幼女が成人するまでの間の労働力も利用できる点があげられる。しばしば、幼い嫁というより婢女(ひじょ)のように酷使され、清(しん)朝時代にもその虐待禁止令が出されるほどであった。兄弟姉妹として育てられた当事者が夫婦となることには、とまどいと忌避の感情が強かったが、親が強制的に抑え、いっしょにさせていたというのが実情であったらしい。このことは、台北近郊のA・ウルフの調査で、1910年以降若者たちが都市に職をみつけ自立できるようになると、ほとんどが親の反対を押し切って他出してしまったこと、それ以前に結婚した夫婦も、離婚や婚外性交渉など婚姻への不適応が、他人同士の結婚に比べ高い頻度でみいだされるという報告からも推測される。

[末成道男]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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