妊娠と出産後の甲状腺の変化

六訂版 家庭医学大全科 の解説

妊娠と出産後の甲状腺の変化
(内分泌系とビタミンの病気)

 妊娠時は甲状腺が少し大きくなります。甲状腺ホルモンを結合する蛋白が増えるのでチロキシン濃度は2倍にも増えますが、甲状腺の機能を示す遊離チロキシン濃度は妊娠初期にわずかに増え、後期には非妊娠時の正常範囲の下限となる程度のわずかな変化なので、妊娠した時は遊離チロキシン濃度で甲状腺の機能を評価することが重要です。

 一方、出産後は4分の1くらいの人に甲状腺機能の変化が認められ、この多くは無痛性甲状腺炎であることが明らかになっています。従来、産後のひだちが悪いといわれていたもののうちのかなりのものは、この疾患だったのだろうと考えられています。

 また、バセドウ病は妊娠中はよくなって、出産後に急に悪くなることが多いので、甲状腺疾患のある患者さんは妊娠前後の時期は甲状腺専門医の管理をきちんと受けることが重要です。そうすればバセドウ病治療中であっても、一律に妊娠・授乳は禁止ということはありません。

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報