内科学 第10版 「孤立性胸膜線維性腫瘍」の解説
孤立性胸膜線維性腫瘍(胸膜腫瘍)
概念
臓側胸膜に発生する線維腫.良性線維性中皮腫,良性限局性胸膜中皮腫などとよばれていたが,現在は孤立性胸膜線維性腫瘍という名前で統一されている.有茎性発育が特徴である(図7-14-4).
疫学
アスベストとの因果関係はなく,あらゆる年齢層(5~87歳)に発生する.女性にやや多い.
病理
臓側胸膜から発生し,胸腔内にポリープ状に発育する.呼吸で位置が変わることがある.大きく発育するが,組織学的には良性であるが,無茎性に発育するものは悪性所見がみられる.胸膜中皮腫との鑑別が問題となる.孤立性胸膜線維性腫瘍は中皮細胞マーカーのサイトケラチンが陰性で,間葉系細胞マーカーのビメンチンが陽性である.
臨床症状
無症状のことがほとんどである.
検査成績・診断
境界明瞭な孤立性の均一な腫瘍で,造影剤増強効果を2/3に認める.呼吸性移動が確認できることがある.30%に石灰化を認める.切除後病理学的に診断される.
治療
VATSにより完全切除する.無茎性腫瘍は2/3に再発する.[矢野聖二]
■文献
Light RW: Pleural diseases. 4th ed. Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, 2001.
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報