日本大百科全書(ニッポニカ) 「宗清花伝書」の意味・わかりやすい解説
宗清花伝書
そうせいかでんしょ
いけ花伝書。本書名は奥書の相伝者最初の花名に「宗清」とあるところからかりに名づけられたもので、正式の目録名は『立花図巻』(大和(やまと)文華館蔵)となっている。奥書によると、池坊(いけのぼう)流の弟子である宗清飯島六位からその弟子大窪(おおくぼ)某に伝授されたものとなっており、享禄(きょうろく)2年(1529)の年号が記されている。相伝者宗清についてはつまびらかでない。伝書の内容は、三具足(みつぐそく)、平地(ひらち)、寿命、古今、高人、竹葉花、蓮花(れんか)、中央花、岸崛(がんくつ)、水躰(すいたい)、風花、庭栽、釣花瓶(つりかびん)、釣舟、柱花(はしらはな)の15項目に分けられ、それぞれに作品図と簡単な説明が加えられている。思想としては『仙伝抄(せんでんしょう)』のものと近く、現存花伝書の写本中もっとも古いものとして貴重な資料といえる。本文の筆跡ののびやかさ、大和絵風の簡潔な花図、用紙、装丁から室町末期の成立の花伝書として高い水準をもつものであり、伝授者宗清が当時かなりの教養をもった人物であることをうかがわせる。
[北條明直]