富筋(読み)とみすじ

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「富筋」の意味・わかりやすい解説

富筋
とみすじ

地歌箏曲の流派名。大阪の地歌箏曲演奏家で,名前の最初に「富」の字のつく派をいう。富筋という独立した流儀はないが,三弦本手としては野川流,箏曲としては継山流を伝承するもので,同じ大阪でも「菊」の字のつく菊筋とは,レパートリーや演奏解釈に相違がある。大阪南地を地盤にしていたので「南派」と呼ばれたこともあった。富沢勾当に始まり,その門下富崎宗順富永久寿一,富岡福寿一らに分かれて伝承され,富崎の門からは富崎春昇,富永からは富永敬琴らを出したが,敬琴門下の 1世富山清琴は富崎春昇にも師事したので,両系を代表する富筋の中心人物として活躍した。

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世界大百科事典(旧版)内の富筋の言及

【地歌】より

…箏曲化されていない楽曲,あるいは箏の編曲はあっても,三味線の比重の強い楽曲を,狭義の地歌とした場合には,その伝承者は大阪に多いことになる。北派ともいわれる菊の字を姓に含む菊筋の演奏家では,菊原琴治の娘の菊原初子(1899‐ ),南派の富の字を姓に含む富筋の演奏家では,東京に進出した富崎春昇とその門下の富山清琴(1913‐ )が,いずれも人間国宝に指定された。 別に九州にも独自の伝承が行われ,とくに三味線の技巧的発達をくふうするものが多かったが,明治以降に,長谷幸輝(ながたにゆきてる)や,その門下の川瀬里子(1873‐1957)などが東京に移住してからは,東京の生田流箏曲家は,この九州系の地歌三味線家でもある者が主流を占めるに至った。…

※「富筋」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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