朝日日本歴史人物事典 「川原崎助右衛門尉」の解説
川原崎助右衛門尉
近江国(滋賀県)神崎郡伊庭の住人。元亀1(1570)年織田信長が近江制圧のため伊庭惣中に人質を強要した際,惣を代表して出た3人のうちのひとり。他のふたりの名前は伝わらない。最初に決められたひとりが大病したため,自ら身代わりとなると名乗り出た。惣中は彼らに対して諸役を永代免除することを決め,川原崎家に対する約束は大正年間まで続いた。この事蹟は,伊庭と山路の間の水争いとして村人に伝承された。すなわち,稲葉山で開かれた評定で伊庭が敗北したが,助右衛門尉が割腹自害して訴願したので,裁決は伊庭に有利に下されたとされる。義民伝承としては最も古いものに属する。
(保坂智)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報