行政庁が,申立てや申請に基づいて,ある程度訴訟手続に準じる慎重な手続を経て,行政上の法律関係における紛争解決のために行う判断をいい,次のものがある。なお,裁決のこのような性質から,裁決をした行政庁は,後において裁決に誤りがあることを発見しても,これを取り消したり変更したりすることは許されない。(1)行政不服審査法は,行政不服審査を求める不服申立ての一種である審査請求または再審査請求に対して,審査請求または再審査請求をうけた行政庁が行う判断を,裁決と呼んでいる。この裁決には,却下の裁決,棄却の裁決,および認容の裁決がある。審査請求が審査請求をすべき期間を経過した後になされた場合などのように,審査請求,再審査請求が不適法である場合には,却下の裁決が行われる。審査請求,再審査請求が適法であるが,その対象である処分が違法でもなく不当でもないなど,理由がない場合には,棄却の裁決が行われる。審査請求,再審査請求が適法であり,かつ,その対象である処分が違法であるなど,理由がある場合には,原則として,認容の裁決が行われる。裁決は,書面で行われ,かつ,理由を付されなければならない。行政不服審査法は,異議申立てに対する行政庁の判断を決定と呼んでいるが,上の意味での裁決に限らず,決定をも含めて,広く行政上の不服申立てに対する行政庁の判断を総称して,裁決と呼ぶこともある。(2)行政上の法律関係に関する裁定も裁決と呼ばれる。
執筆者:岡村 周一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
行政庁が争訟手続を経て行う決定をいう。実定法上は裁決、裁定、決定、判定、審決などのことばで表現されている。
(1)行政庁が第一次的に行った行政処分に対してなされた不服申立てについて審査庁がする決定をいう。その原則を定める法律は行政不服審査法(昭和37年法律160号)である。裁決は書面で、かつ理由を付し、審査庁が記名押印しなければならない。裁決は、審査請求人に裁決書の謄本の送達(これによりがたいときは公示)をすることにより効力を生ずる。裁決は関係行政庁を拘束する。
(2)対等の当事者間の紛争を行政庁が裁断する決定をいう。例外的にのみ認められている(土地収用法39条以下、漁業法45条、鉱業法90条以下、採石法12条以下、公害紛争処理法42条の2以下、地方税法8条、地方自治法9条など)。
[阿部泰隆]
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…特許審判,海難審判,公正取引委員会の行う審判などがこれに当たる。その手続の結果出される判定の呼称は一様でなく,特許審判,公正取引委員会の審判では審決といい,海難審判では裁決という(特許法157条,独占禁止法54条,海難審判法42条)。このような審判を行う者を審判官という。…
※「裁決」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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