工業黒化(読み)こうぎょうこっか(その他表記)industrial melanization

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「工業黒化」の意味・わかりやすい解説

工業黒化
こうぎょうこっか
industrial melanization

工業暗化ともいう。各種のシャクトリガなどで,工業地帯において,翅の黒ずんだ突然変異体が優勢を占める現象をいう。イギリスの H.B.ケトルウェルが研究したトビモンオオエダシャクの例が最も有名。これらのガでは平常から黒化型 (暗化型) は突然変異によって偶発するが,目立ちやすいために鳥に捕食されやすい。工業地帯では,煤煙廃ガス樹皮地衣類がはげ落ちるなどの理由から,ガの生活の場である林が黒ずんでくるので,黒化型は保護色となり,淡色の野生型がかえって目立ちやすくて,淘汰により除かれてしまうものと解釈されている。淡色型優勢から黒化型優勢への移行は数十世代のうちに急速に行われた例もあり,自然淘汰による進化の実例とみなされることもある。ただし両型はまだ同一種に属しており,翅色が異なるのみで,煤煙の減少で元の状態に戻るため,種の分化がこれで説明できているのではないことに注意を要する。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の工業黒化の言及

【工業暗化】より

…工業黒化ともいわれる。工業化に伴い煤煙(ばいえん)などで環境が暗化するにつれ,昆虫の黒化型(暗化型)が増加する現象で,鱗翅(りんし)目の昆虫にその例が多い。…

※「工業黒化」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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