朝日日本歴史人物事典 「広智」の解説
広智
平安前期の天台宗の僧。はじめ鑑真の弟子であった道忠に師事し,下野国(栃木県)小野寺に住した。円仁の出家の師となり,大同3(808)年彼を伴い比叡山に登った。弘仁3(812)年には空海から経典書写の依頼を受け,また同6年の最澄の東国巡化の際にはこれを助け,下野国の宝塔建立を援助した。上野(群馬県)の法華塔院で金剛,胎蔵の両部灌頂を受け,比叡山に入って天台教学を学び,勅により下野国の鎮国師となった。中央にまで名を馳せた碩徳で,世に広智菩薩と称された。天台宗が東国に広まったのは,この広智の存在に負うところが大きいといわれている。
(本郷真紹)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報