弁道・弁名(読み)べんどうべんめい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「弁道・弁名」の意味・わかりやすい解説

弁道・弁名
べんどうべんめい

荻生徂徠(おぎゅうそらい)の著。この2書は、儒学の思想に関する徂徠の見解を、体系的に整理した形で、漢文で論述したもので、その理論の独創性がよく示されている。『弁道』はいわば総論に、『弁名』はその各論に相当する。「弁(辨)」とは、解明するの意の語で、儒学は「道」に関する学問であるとする立場から、その「道」とはいかなるものかを論じたのが前者であり、それに対し、道・徳・仁・智(ち)など主要な名辞すなわち概念について、34の項に分けて解説したのが後者である。『弁道』は、その末尾に「享保(きょうほう)二年(1717)七月」の署名があるので、そのころ成稿したとみられるが、その後に徂徠は改訂を加え、また出典の校合を門人に依頼したりして、徂徠没後の1737年(元文2)に出版された。『弁名』にも1789年(寛政1)の刊本がある。なお、徂徠門下の宇佐美灊水(うさみしんすい)は、注釈書として『弁道考注』1巻(寛政12年刊)と、『弁名考注』2巻(未刊)を著している。

尾藤正英

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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