彌・益・重・転(読み)いや

精選版 日本国語大辞典 「彌・益・重・転」の意味・読み・例文・類語

い‐や【彌・益・重・転】

〘副〙 (接頭語「い」が、物事のたくさん重なる意の副詞「や」に付いたもの)
事柄や状態がだんだんはなはだしくなるさまを表わす。いよいよ。ますます。
万葉(8C後)二・二一一「去年見てし秋の月夜は照らせれど相見し妹は彌(いや)年さかる」
② 状態を意味する語に付いて、程度のはなはだしいさまを表わす。いちだんと。きわめて。「いやおこ」「いやさやしく」「いやたか」「いやとお」など。
※万葉(8C後)一・三六「此川の 絶ゆる事なく 此山の 彌(いや)高知らす 水激(みなそそく) 滝の宮処(みやこ)は 見れど飽かぬかも」
③ 程度が最もはなはだしいさまを表わす。また、物事を強めて言い表わす。最も。いちばん。まったく。ほんとに。「いやさき」「いやはし」「いやはて」など。
古事記(712)中・歌謡「かつがつも 伊夜(イヤ)さきだてる 兄(え)をし枕(ま)かむ」
[語誌](1)①②の意味のものは「既にそうしている(そうである)ものが、更に…する(…になる)」という面が強い。上代に盛んに用いられ、特に③の意味のものは記紀歌謡に集中して見られる。平安時代以後は「いよいよ」等に代わられた。
(2)「いや…に」の形をとって、慣用句または一語の副詞のように用いることも多い。平安時代には「ただ…に…」という形にとってかわられ、「いやましに増す」「いやまさりにまさる」が固定的に使われる程度となった。

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