役者名物袖日記(読み)やくしゃめいぶつそでにっき

改訂新版 世界大百科事典 「役者名物袖日記」の意味・わかりやすい解説

役者名物袖日記 (やくしゃめいぶつそでにっき)

演劇書。万里亭夫古工著。1771年(明和8)正月,河名藤八郎,菊岡吉右衛門刊。5巻5冊。序には〈三芝居名物袖日記〉とある。本書は,江戸歌舞伎の起源から説き起こし,役者芸風,技芸評に及んでおり,江戸における本格的な劇書の嚆矢(こうし)といわれる。内容は,巻一は,江戸芝居の創始,諸行事の起源など,いわゆる〈芝居事始め〉を集成し,巻二は,古名優の定紋,扮装,名言など,いわゆる〈役者名物〉とし,書名の謂(いわれ)を示す。巻三では,2世市川団十郎に代表される役者の理想像を説く。巻四以下は〈付録〉とし,巻三までの本論をふまえて,当時の劇界の風潮に対する鋭い批評が見え,注目される。《日本庶民文化史料集成》第6巻に収録。なお,のちに《古今役者名物大全》(《演劇文庫》第4編に収録),《役者年々鑑》などと改題し,刊行されている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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