徙民政策(読み)しみんせいさく(英語表記)xǐ mín zhèng cè

改訂新版 世界大百科事典 「徙民政策」の意味・わかりやすい解説

徙民政策 (しみんせいさく)
xǐ mín zhèng cè

中国の歴代王朝がときに応じて行った政策で,一定の政治目的のために人民を強制的に他地に移住させることをいう。移住させられる民を徙民という。史上最も早い例は,周が殷を滅ぼしたのち,その〈頑民〉を新都洛陽に移した事例である。漢の高祖が旧六国の大族を関中に移し,武帝が郡国の豪傑で300万銭以上の資産家を茂陵に移した諸例も著名である。このように政権にとって警戒すべき勢力や経済力のある者を首都周辺に集中して中央集権を強化しようとするのが一つの目的であるが,漢の武帝の河西四郡設置のように,占領地における植民を目的とすることもある。漢はまた征服した異民族の部落内地に移住せしめたが,これがのちに五胡十六国時代を生むことになる。遊牧系国家の場合も征服民に対する強制移住がしきりに行われた。北魏が徙民に計口授田を行ったことから,これを国家的奴隷制経営とする見方も一時行われたが,当時の徙民は身分的には良民である。しかし政権の拡大に伴って起こるこうした強制措置は,国家の性質解明に重要な手がかりとなる。
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