日本大百科全書(ニッポニカ) 「御冠船」の意味・わかりやすい解説
御冠船
おかんせん
琉球(りゅうきゅう)国王の代替わりごとに冊封(さくほう)を行うため、中国皇帝の名代で派遣される使節の乗る船の俗称。冊封使船、封王使船ともいう。沖縄の方言では「ウクヮンシン」と称す。琉球国王は明(みん)・清(しん)2代にわたって中国皇帝の冊封を受けた。派遣される使節を冊封使といい、総勢400人ほどの人員が約半年間琉球に滞在した。一行は皇帝の名で国王の即位式を挙行したが、このとき皇帝より与えられた冠を国王にかぶせる儀礼があった。御冠船の名のおこりは、使節の乗船がこの冠を持参してくることに由来する。即位式が済むと国王主催の宴が七度開催されるのが習わしで、その席で使節を慰めるために琉球の芸能が演じられた。沖縄独特の演劇である組踊(くみおどり)あるいは琉球舞踊、三味線音楽などはこのために発達したものであり、この芸能を称して御冠船踊、あるいは単に御冠船と称することもある。使節は帰任後、琉球の国情を皇帝に復命したが、この復命書は一般に冊封使録と称され、沖縄歴史研究の重要な文献資料となっている。
[高良倉吉]
『島尻勝太郎著『近世沖縄の社会と宗教』(1980・三一書房)』