心ブロック(読み)しんぶろっく

日本大百科全書(ニッポニカ) 「心ブロック」の意味・わかりやすい解説

心ブロック
しんぶろっく

心臓の規則正しい収縮をつかさどる刺激伝導系の興奮伝導障害によって刺激の伝達速度が遅延あるいは途絶する状態をいう。障害部位によって洞房ブロック、房室ブロック、脚ブロックなどに分類されるが、心ブロックは通常、房室ブロックと同義語として使われることが多い。

 房室ブロックのうち、房室結節の障害程度によって次の3種に分けられる。伝導速度の遅延だけのものを1度房室ブロック、伝導がときどきとだえるものを2度房室ブロック、心房からの刺激がまったく心室へ伝わらないものを3度房室ブロックまたは完全房室ブロックという。また一過性房室ブロックの原因としては、ジギタリス剤の過剰投与によるものが多く、そのほか心筋梗塞(こうそく)やリウマチ熱によっても生じる。慢性の房室ブロックの原因としては、心筋の変性や線維化によるものが多く、サルコイドーシス心臓腫瘍(しゅよう)に合併することもある。1度および2度の房室ブロックのうちでも心拍数が50以上のときには、経過観察あるいは薬物治療が試みられる。さらに高度の房室ブロックがある場合には、失神発作の既往の有無も考慮に入れたうえで、人工ペースメーカーの植え込み術が行われる。

[井上通敏]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の心ブロックの言及

【アダムズ=ストークス症候群】より

…1761年G.モルガーニによって記載され,19世紀に入ってアダムズR.Adams(1827),ストークスW.Stokes(1846)らによって報告されて,広く認められるようになった症候群。元来は,完全房室ブロックなど心ブロック(心臓の刺激伝導系における伝導障害)のある患者で,突然,心停止による脳循環不全が起こり,意識消失や全身痙攣(けいれん)が起こる病態をさしたが,現在では,心ブロック以外の不整脈や著しい血圧低下による一過性脳循環不全をも含めて総称している。原因は,上記の完全房室ブロックや洞房ブロック,洞停止などの心ブロックなどによる徐拍や,心室細動,心室頻拍,心房粗動の1対1伝導などの頻拍性不整脈によって心拍出量が激減し,一時的に脳循環不全となることによる。…

※「心ブロック」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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