出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報
サルコイド(sarcoid)という名前の一部である sarco はラテン語で「肉」を、また oid は「~のような」を意味しています。したがってサルコイドーシス(sarcoidosis)とは、「肉のようなものができる病気」という意味で、大小さまざまな
といっても、がんとはまったく違いますし、他人に感染する心配もありません。発症しやすい年齢は男女ともに20代ですが、40代以降は女性に多くみられます。
原因はまだわかっていません。細菌が原因として提唱されていますが、確証はありません。また、遺伝はしないと考えられています。
肺門という肺の中心のリンパ節が両側で腫大(はれて大きくなる)します(80~95%)。
無症状で健康診断時にたまたま発見される例が、全体の半数を占めます。
眼の病気がよく起こり(40~50%)、その多くはぶどう膜炎です。霧がかかったようにぼやけたり、視野のなかを黒い点が動いたりします。通常は両側性です。重度の視力喪失が起こることがあり注意が必要です。眼症状は女性に多い傾向があります。
皮膚には、赤みを帯びた斑点、湿疹などが出現することがあります(10~20%)。かゆみや痛みを伴いません。
心病変(5~10%)は、軽度の心電図異常だけなら心配はありませんが、実際に不整脈を自覚するようになったら注意が必要です。サルコイドーシスによる死亡の半数以上は心臓に関係するものです。
神経系では、顔面神経麻痺と聴覚神経麻痺、また
また、肉芽腫によるビタミンD産生の結果、血液中のカルシウム濃度の上昇や、腎結石が起こることがあります。
①血液検査
アンジオテンシン変換酵素(ACE)は70~80%の症例で高くなり、この病気の活動性の指標としても重要です。
②胸部X線および胸部CT検査
両側肺門リンパ節のはれ具合や、肺全体にわたって小さな塊がないか調べます。
③気管支鏡検査
気管支のなかを食塩水で洗い、その洗浄液のなかに含まれる細胞、とくにリンパ球の数や白血球表面マーカーでのCD4とCD8の比の上昇を調べます。
④組織検査
顕微鏡で類上皮細胞肉芽腫を確認すること(生検)で診断されます。表在リンパ節の
患者さんの5~10%では、病気が長期間続くことがありますが、70~80%では発病3年以内におさまります。日本人のデータに基づくエビデンス(治療の根拠)がまとめられており、無症状なら基本的には治療はせずに、病気の経過を見守ります。ぶどう膜炎には、ステロイド薬の点眼・結膜下注射のほか、
一方、以下の場合にはステロイド薬を中心とした薬物療法を行います。
①肺病変が進行して
ステロイド薬の投与法は、症例により異なり一律には決められませんが、一般に初回投与量はプレドニゾロン1日15~30㎎相当で始め、1カ月以上続けます。軽快傾向がみられたら、以後は自覚症状や検査所見を参考にしながら徐々に減らしていきます。
両側肺門リンパ節の腫脹(はれ)のみの場合は、学業や仕事はそのまま続けてかまいません。サルコイドーシスだからこうしてはいけない、ということはとくにありません。
ただし、激しいスポーツなどは避けたほうがよいでしょう。また精神的、肉体的ストレスのかからない生活をすることが大切です。眼病変のある場合は、長時間のテレビ、テレビゲームは避けましょう。
とくに、ステロイド薬をやめた時は、再発することがあるので、自己判断せず、必ず診察および検査を定期的に受けることが大切です。
大曽根 康夫
ベーチェット病、原田病とともに、日本における三大ぶどう膜炎のひとつです。
全身のリンパ節やいろいろな臓器(肺、肝臓、
よくわかっていませんが、感染症などがきっかけになって免疫反応が亢進することによると考えられます。
眼がかすむ、見えにくくなる、黒い小さい点が飛んでいるように見えるなどのぶどう膜炎に一般にみられる症状が現れます。結節性病変は主に
他のぶどう膜炎と同様に、
前部ぶどう膜炎に対しては炎症を抑えるためのステロイド薬や、虹彩の癒着を防ぐための
予後は比較的よいといわれていますが、慢性化すれば、適切な治療にもかかわらず視力が0.1以下に低下する人が約10%いるとされています。眼の症状がなくても、健康診断の胸部X線検査などでサルコイドーシスを指摘されたら、すみやかに眼科を受診することをすすめます。
河本 知栄, 喜多 美穂里
全身性の
原因は不明です。ツベルクリン反応の減弱がみられるので、何らかの免疫異常が関わっている可能性はあります。
数年の経過で、異なる臓器の症状が出ることもあり、病気の進行は一定ではありません。
●皮膚サルコイドーシス
皮膚サルコイドーシスだけの場合もあります。日本では、結節型(大結節型、
結節型は、5㎜以上の赤色ないし黄色の結節が数個現れます。治ったあと、褐色の
●
長期にわたってあった膝などの傷が、紫色に盛り上がります(ケロイド様)。
皮下型は四肢に持続する皮下結節で、
結節性紅斑(こうはん)は若い女性に多く、初発症状のことがあります。
肺病変:半数に呼吸器症状がみられ、半数は症状が残ります。実質内肉芽腫、線維化と両肺門部のリンパ節腫脹(BHL)がみられます。
心病変:心電図の異常、とくにブロックがみられます。
眼病変:ぶどう膜炎や
検査ではACE、リゾチーム、カルシウムの上昇、ツベルクリン陰性を示します。皮膚、その他の組織所見として、
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会による診断の手引き(2006年)が参考になります。
全身症状があれば、ステロイド薬を内服(1日30~40㎎)します。70%は、自然に落ち着きます。
皮膚科、内科、眼科を受診します。
宇谷 厚志
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
原因不明の多臓器肉芽腫(にくがしゅ)性疾患で、肺、肺門リンパ節、皮膚、目、心臓、そのほか多くの臓器や組織に肉芽腫を形成する。この肉芽腫は類上皮細胞からなり、壊死(えし)をほとんど伴わない。
日本では約半数が胸部X線検査で発見され、20歳代を中心とした若年層に多い。発生率は北海道でもっとも高く、南に行くほど漸次低下する。
肺病変は肺門型、肺門肺野型、肺野型、肺線維症型に分類される。肺線維症型以外の型では自覚症状に乏しい。眼病変はこの疾患の初発症状であることが多い。その約70%がぶどう膜炎である。皮膚病変には結節型、局面型、びまん浸潤型、皮下型がある。神経病変の好発部位は顔面神経であるが、予後不良の中枢性のものもある。心臓病変はしばしば突然死の原因となる。
臓器の組織や経気管支肺生検、気管支肺胞洗浄液から非乾酪性類上皮細胞肉芽腫が認められる。免疫学的には、T細胞のアレルギーを示す遅延型過敏症の低下(ツベルクリン反応の陰性化ないし弱反応化)、B細胞の機能亢進(こうしん)を示す免疫グロブリン値の上昇がみられる。活動期には血清アンジオテンシン変換酵素が上昇し、症状の改善とともに低下する。
サルコイドーシスの多くは良性に経過し、自然治癒する傾向が強いが、一部の症例(約10%)は改善と悪化を繰り返して難治の慢性疾患となる。これは特定疾患(難病)に指定されている。コルチコステロイドは症状を和らげ、炎症と肉芽腫形成を抑制する。
[山口智道]
原因不明の全身性疾患。病気の初期には,多くの例で胸部X線写真で両側の肺門リンパ節が玉を連ね重なり合うようにはれ,そのほかに外部からふれるリンパ節,肺,眼,皮膚,心臓,顔面神経などの全身の臓器が侵されることがある。そのとき,病変部位の組織を検査すると,類上皮細胞からなる結節がみられる。結核と似ているが,結核菌によるものではなく,原因はまだ明らかにされていない。しかし発病にはある種の免疫作用が関係していることはわかっている。結核菌に感染してツベルクリン反応が陽性の人がこの病気になると,ツベルクリン反応が弱くなるかまたは陰性になる。欧米に比べると日本ではまだ少ない病気であるが,北の北海道のほうが南の九州に比べて患者数が多い特徴がある。
病気の初期は自覚症状がほとんどなく,約50%は定期的X線検査で発見される。両側の肺門リンパ節腫張のほかに,肺の散布性陰影をともなったものがある。この肺門リンパ節腫張の70~80%は2年もすると消失するが,なかには肺繊維症に進む場合がある。また,まぶしさや物がぼやけて見えるという訴えで眼科を受診し,虹彩毛様体(ぶどう膜炎)や眼底病変が発見されることがある。緑内障,白内障から失明に至ることがある。数%の患者(ことに中年女子)では心臓症状を起こして急死の原因となる。
胸部X線写真でこの病気が疑われた場合,気管支鏡検査を行い,肺から小さい組織をとり病理学的検査をして診断する。
治療には,かつてはすべての例に副腎皮質ステロイド剤が使われる傾向があったが,今日ではその使用は肺胞,心臓などの症状の場合に限られている。両側肺門リンパ節腫張やわずかの肺の陰影がある場合には,治療せずに経過を観察する。肺結核と違う病気なので,安静療法の必要はない。通学や就業もほとんど平常どおりでよいが,激しいスポーツなどは避ける。
執筆者:三上 理一郎
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[各種のぶどう膜炎]
ぶどう膜炎では,特徴的な経過あるいは特異的検査結果などを組み合わせて臨床診断がされる。日本におけるぶどう膜炎の代表は,ベーチェット病,サルコイドーシス,原田病である。 ベーチェット病は,眼症状,口腔再発性アフタ,皮膚症状,外陰潰瘍を主要症状とする全身疾患である。…
※「サルコイドーシス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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