サルコイドーシス(読み)さるこいどーしす(英語表記)sarcoidosis

日本大百科全書(ニッポニカ) 「サルコイドーシス」の意味・わかりやすい解説

サルコイドーシス
さるこいどーしす
sarcoidosis

原因不明の多臓器肉芽腫(にくがしゅ)性疾患で、肺、肺門リンパ節皮膚、目、心臓、そのほか多くの臓器や組織に肉芽腫を形成する。この肉芽腫は類上皮細胞からなり、壊死(えし)をほとんど伴わない。

 日本では約半数が胸部X線検査で発見され、20歳代を中心とした若年層に多い。発生率は北海道でもっとも高く、南に行くほど漸次低下する。

 肺病変は肺門型、肺門肺野型、肺野型、肺線維症型に分類される。肺線維症型以外の型では自覚症状に乏しい。眼病変はこの疾患の初発症状であることが多い。その約70%がぶどう膜炎である。皮膚病変には結節型、局面型、びまん浸潤型、皮下型がある。神経病変の好発部位は顔面神経であるが、予後不良の中枢性のものもある。心臓病変はしばしば突然死の原因となる。

 臓器の組織や経気管支肺生検、気管支肺胞洗浄液から非乾酪性類上皮細胞肉芽腫が認められる。免疫学的には、T細胞のアレルギーを示す遅延型過敏症の低下(ツベルクリン反応の陰性化ないし弱反応化)、B細胞の機能亢進(こうしん)を示す免疫グロブリン値の上昇がみられる。活動期には血清アンジオテンシン変換酵素が上昇し、症状の改善とともに低下する。

 サルコイドーシスの多くは良性に経過し、自然治癒する傾向が強いが、一部症例(約10%)は改善と悪化を繰り返して難治慢性疾患となる。これは特定疾患難病)に指定されている。コルチコステロイドは症状を和らげ、炎症と肉芽腫形成を抑制する。

[山口智道]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「サルコイドーシス」の意味・わかりやすい解説

サルコイドーシス
sarcoidosis

ベック類肉腫ともいう。小型の類上皮細胞肉芽腫の集団が出現する原因不明の病気で,内科と皮膚科にまたがる全身病である。皮膚,リンパ節,唾液腺,涙腺,毛様体,心臓,肺,肝臓,精巣,骨,下垂体などに好発する。目の虹彩に結節をつくることが多く,結核性とまちがえることがよくあったが,この肉芽腫では結核と異なり乾酪壊死がない。大多数は良性であるが,網膜浸潤で視力障害を起したり,心筋が侵されて心停止を起し,死にいたることもある。副腎皮質ホルモンが有効。

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