思切(読み)おもいきる

精選版 日本国語大辞典 「思切」の意味・読み・例文・類語

おもい‐き・る おもひ‥【思切】

〘他ラ五(四)〙
① かたく決心する。決死覚悟をする。→おもいきって
平家(13C前)八「いかにしてのがるべしとは覚えねど、おもひきって雲霞の如くなる敵のなかをわって通る」
② きっぱりとあきらめる。
源氏(1001‐14頃)手習「今はかかる方に思きりつる有様になん」
③ (自動詞的に) 他を気にしないで大胆に行なう。→おもいきった
浮世草子・好色一代男(1682)七「京なればこそ、かほるなればこそ、思ひ切(キッ)たる風俗と」
[補注]②の「源氏」の例は、「おもひかきりつる」となっている伝本が多い。

おもい‐きり おもひ‥【思切】

[1] 〘名〙
① もうこれ以上しかたがないと考えること。ものごとを決断すること。また、あきらめぐあい。
浄瑠璃・聖徳太子絵伝記(1717)三「敵の詞になびかぬすすきほに顕(あらは)れし思ひ切」
② 思い切って安くすること。
最暗黒之東京(1893)〈松原岩五郎三五「現金の取引する処大略三割方の思(オモ)ひ切(キリ)あり」
[2] 〘副〙 徹底的に。おもうぞんぶん。
第三者(1903)〈国木田独歩〉一三「さうして二人で抱き合って思ひきり泣いたのよ」

おもいっ‐きり おもひっ‥【思切】

〘副〙 「おもいきり(思切)」を強めた言い方。思うぞんぶん。力いっぱい。
防雪林(1928)〈小林多喜二〉一「そんな処は泥水がたまってゐるので、その度に思ひっ切り泥をはねあげて、顔までかかった」

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