住居や鉄道線路・道路を,吹雪や雪崩(なだれ)による雪害から守るための森林。樹木という生物の特性を活かして,その集団である森または林を防災設備として位置づけたもの。コンクリート防雪柵など,人工構築物より費用が安く防災効果が大きい。景観もよく,間伐や更新伐で木材も産出されるので,経済性も大きい。JRでは鉄道防雪林として線路の保守に活用している。日本で最初の鉄道林は1894年に東北本線の水沢~小湊(青森県)間38ヵ所へ造成された。ドイツ留学から帰った本多静六の提言で実現したもので,導入にあたってカナダ太平洋鉄道など先進諸外国の例にならった。ドイツでは1852年,ロシアでは1887年に鉄道防雪林を造成している。防雪林は木材生産が目的の経済林と異なり,木の仕立ては下枝を発達させる。吹雪防止林は樹葉によって風速を低下させ,雪を林内に沈殿させるとともに林縁へ雪を堆積させる。主林木はスギ,ヒノキ,ヒバ,アカマツ,クロマツで,副林木として,生長が早いカラマツ,ニセアカシア,ヤチダモ,クリなどが用いられる。北海道では泥炭土に強いドイツトウヒが多く,エゾマツ,トドマツも使われる。雪崩防止林は,斜面の立木が立杭の役目をして,滑落しようとする積雪を支える。また林地内部は樹葉で陽光が遮断されて,気温の上昇がおさえられる。このように人工構築物ではできない発生源対策が森林によって可能となる。造林は稚樹期の生長促進と外からの圧力に対応するため,密植ぎみではあるが,1m間隔で正三角形植栽をし,10年目に間伐をする。遅れると木が細く,林内,林縁の下枝が枯れる。20年目ごろから防災機能が高くなる。森林法では防雪保安林(吹雪防止)と雪崩防止保安林と別個に規定している。防雪保安林は平地部の都市化により建物などの構造が発達したため規定だけ残り現物はない。JRの鉄道林設置標準では防雪林,防備林に区分し,防雪林の中で吹雪防止林,雪崩防止林と規定している。鉄道防雪林の半分以上は北海道にある。
→保安林
執筆者:上善 峰男
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