急性中耳炎(読み)きゅうせいちゅうじえん(英語表記)Acute otitis media

六訂版 家庭医学大全科「急性中耳炎」の解説

急性中耳炎
きゅうせいちゅうじえん
Acute otitis media
(耳の病気)

どんな病気か

 鼓膜(こまく)の内側の空間である中耳に炎症が起きた状態で、乳幼児の急性感染症の代表的なものです。子どもの耳管は大人に比べて太く短いため、6カ月~2歳児によく起こります。

原因は何か

 原因は肺炎球菌(はいえんきゅうきん)、インフルエンザ菌が大部分ですが、最近、ウイルス感染の関与も推定されています。細菌・ウイルス感染症、副鼻腔炎(びふくびくうえん)咽頭炎(いんとうえん)などの上気道感染症に続いて、上咽頭から耳管を経由して炎症が及びます。

 近年、耐性(たいせい)(薬が効かない)肺炎球菌、耐性インフルエンザ菌の頻度が急増しています。そのため、中耳炎が重症化したり、長引く場合も増えてきており、最初の治療が重要です。また、保育園児など集団保育を受ける環境では、反復性中耳炎が増加しています。

症状の現れ方

 耳痛や耳だれ、発熱、耳閉感(じへいかん)などですが、小さな子どもでは耳痛を訴えず発熱のみのこともあります。子どもの場合、小児科を受診することが多いのですが、早期診断のためにも、耳を気にしている様子がみられる時には、耳鼻咽喉科専門医の診断が必要です。

検査と診断

 鼓膜を観察すれば容易に診断がつきます。鼓膜の発赤、腫脹、うみの貯留による混濁を認め、穿孔(せんこう)(穴)があると拍動(はくどう)性に耳だれの流出が起こります。治療とともに鼓膜所見は急速に改善するので、治療効果の観察のためにも鼓膜の所見は重要です。

 発熱などの全身症状が強く、外耳道が狭くなっている時は、乳様突起炎(にゅうようとっきえん)などの重篤な合併症を併発していることが多く、注意が必要です。耐性菌の増加もあり、初診時に細菌検査を行うことが大切です。耳だれのほか、上咽頭分泌物を検査することもあり、後者のほうが細菌の陽性率が高くなります。

 難聴(なんちょう)は一般的には軽度ですが、特殊な菌の感染、あるいは重症感染時には内耳性難聴を起こすこともあるので、耳閉感が強かったり、難聴の自覚が強い患者さんでは、純音聴力検査を行い、難聴の程度や性質を知る必要があります。

治療の方法

 耳痛、発熱の有無、鼓膜所見、耳漏の有無等をスコア化し、重症度分類を行います。

 軽症例では3日間経過観察し、改善しないようなら抗菌薬が投与されます。

 中等症以上には抗菌薬の内服が基本で、通常ペニシリン系が最初に選択されます。内服後の鼓膜の変化、細菌検査の結果などを参考に、適宜、抗菌薬を変更します。耐性菌が原因菌と判定された場合には、点滴静注、局所の洗浄などが行われます。

 重症例や抗菌剤5日間投与で改善が認められない時は、鼓膜切開が行われます。鼓膜は切開しても数日で閉鎖し、難聴などの後遺症は起こさないので、必要な時は恐れず鼓膜切開を受けてください。

 中耳炎では、同時に上気道感染を伴っていることが大半で、上咽頭の処置が必要になります。膿性鼻汁(のうせいびじゅう)の多い人には、吸引、鼻洗浄などの処置を行います。

 重症の患者さんには点滴静注が行われることもあります。高熱が続いたり、難聴顔面神経麻痺などの合併症が生じた場合は、救急手術(乳突削開術(にゅうとつさくかいじゅつ))による排膿が必要になります。

病気に気づいたらどうする

 中耳炎はポピュラーな病気で、小児科単独で診察することも多いのですが、一時減少していた合併症が、耐性菌の増加のため近年増える傾向にあります。治療方針の決定に鼓膜の正確な所見が必要ですので、耳鼻科専門医による診察を受けるようすすめます。

菅澤 正

急性中耳炎
きゅうせいちゅうじえん
Acute otitis media
(感染症)

どんな感染症か

 急性中耳炎は小児、とくに2歳以下の乳幼児に多くみられます。中耳と鼻の奥は細いトンネル(耳管(じかん))でつながっていて、かぜをひいた時などに鼻やのどのなかで増えた細菌がトンネルを通って、もともと菌のいない中耳に入り炎症が引き起こされます。

 大人に比べて子どもでは、このトンネルから中耳へ菌が侵入しやすい構造になっていて、しかも菌を除く免疫のはたらきが未熟なため、中耳炎が起こりやすいのです。季節的にかぜをひきやすい冬から春に多くみられます。

 炎症を起こす原因のほとんどが細菌による感染症で、肺炎球菌、インフルエンザ菌が主な原因菌です。最近これらの菌のなかで抗菌薬の効きにくい薬剤耐性菌(たいせいきん)の割合が増え、子どもの難治性中耳炎の原因菌として問題になっています。

症状の現れ方

 鼻水やのどの痛みなどのかぜのような症状に続いて、発熱、急に耳の奥に刺すような強い痛みが始まり、耳がふさがって聞こえにくく感じます。「耳が痛い」ことをうまく伝えられない乳幼児では、耳に手をやるしぐさ、泣いてぐずる、不機嫌で眠らないなどの行動がみられます。時に耳のなかから粘液が出てくる(耳だれ)ことで気づくこともあります。

検査と診断

 耳のなかを直接のぞいて(耳鏡または内視鏡検査)鼓膜(こまく)の状態、発赤、腫脹(しゅちょう)(はれ)、耳だれの有無を観察して中耳炎を診断します。鼻炎(びえん)副鼻腔炎(ふくびくうえん)を併発していることが多いため、鼻のなかの診察も大切です。耳だれや鼻の奥のぬぐい液から原因となる細菌の検査をします。

治療の方法

 症状が軽く鼓膜の変化が少ない場合は、抗菌薬を使わず3日間鎮痛薬だけで様子をみます。軽症でも3日後改善しない場合に抗菌薬が処方されます。

 中等症、重症でははじめから抗菌薬が処方され、重症度に応じて抗菌薬の量を多く処方されることもあります。鼓膜の腫脹(しゅちょう)(はれ)が高度な場合や、抗菌薬を5日間使っても改善しない場合では、鼓膜を切開して中耳にたまった膿を吸い取ります。さらに抗菌薬の点滴をすることもあります。中耳炎の治療とともに鼻炎の治療も必要です。

病気に気づいたらどうする

 耳鼻咽喉科医の診察を受けます。夜間など病院が診療していない時間帯に急に耳が痛くなったら、まず市販の鎮痛薬を服用して安静を保ち、翌日早めに受診しましょう。また、鼻を強くかみすぎないように注意します。

関連項目

 急性中耳炎

余田 敬子

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

デジタル大辞泉「急性中耳炎」の解説

きゅうせい‐ちゅうじえん〔キフセイ‐〕【急性中耳炎】

ウイルス細菌感染によっておきる中耳炎症風邪などの合併症として起こることが多く、小児に多くみられる。耳が痛んで鼓膜が腫れるが、ほとんどは抗生物質非ステロイド性抗炎症薬によって治癒する。痛みや熱、腫れがひどいときには、鼓膜を切開して滲出液を排出する。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

世界大百科事典内の急性中耳炎の言及

【中耳炎】より

…中耳腔の炎症性変化を総称して中耳炎とよぶ。急性中耳炎は風邪のときおこりやすく,耳と鼻の奥をつなぐ耳管を通じて細菌が入り,中耳粘膜の急性炎症をおこしたものである。激しい耳痛,耳閉塞感,ときに発熱があり,抗生物質の治療が有効である。…

※「急性中耳炎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報

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