悪性過高熱(読み)あくせいかこうねつあくせいこうねつしょう(その他表記)Malignant hyperthermia

家庭医学館 「悪性過高熱」の解説

あくせいかこうねつあくせいこうねつしょう【悪性過高熱(悪性高熱症) Malignant Hyperpyrexia】

[どんな病気か]
 全身麻酔をすると、15分に1℃ずつ体温が上昇し、42℃にも達して筋肉硬直(こうちょく)する病気です。死亡率が高く、麻酔科医外科医に恐れられています。
 19番染色体にあるリアノジン受容体遺伝子の異常によっておこります。筋肉が収縮すると、筋小胞体(きんしょうほうたい)に蓄積されていたカルシウムイオンが放出され、再び筋小胞体に吸収されると、筋肉は弛緩(しかん)(ゆるむ)します。この病気では、カルシウムイオンの再吸収がおこらないために、筋肉が収縮しっぱなしになってしまうのです。同じ19番染色体異常でおこるセントラルコア病や筋緊張性(きんきんちょうせい)ジストロフィー(「筋緊張性(強直性)ジストロフィー」)でも、この症状がおこりやすいものです。
 悪性過高熱のおこりやすいミオパチー(コラム「ミオパチーを誘発する薬剤」)が報告されているので、ミオパチーの人は、全身麻酔を極力避けたほうがよいのです。
[治療]
 末梢性筋弛緩薬(まっしょうせいきんしかんやく)のダントリウムが使用されるようになって、大幅に救命率が向上しました。

出典 小学館家庭医学館について 情報

六訂版 家庭医学大全科 「悪性過高熱」の解説

悪性過高熱
あくせいかこうねつ
Malignant hyperthermia
(脳・神経・筋の病気)

 全身麻酔をした時に体温が42℃にまでも上昇し、筋肉が硬直した状態となります。死亡率が高く、麻酔医や外科系医師には恐れられている病気です。リアノジン受容体遺伝子の異常が原因です。

 カルシウムイオンは通常筋小胞体に蓄積されていますが、ここから放出されることで筋収縮の引き金となり、カルシウムイオンが筋小胞体に再吸収されると筋が弛緩します。悪性過高熱ではこの再吸収が起こらず、筋が収縮し続けてしまいます。対処法として、ダントロレンの投与による予防が可能になりました。

 一方、向精神薬を投与すると高熱が続き、意識障害や筋硬直が起こることがあります。これは悪性症候群(あくせいしょうこうぐん)と呼ばれ、よく似てはいますが、悪性過高熱とは別の疾患です。

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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