…しかし,この時代から中世を通じて医術は内科的なものが主体で,それを僧侶のみが行い,不潔,不浄な血液や膿汁にまみれがちな処置は治療師(床屋や湯屋)にまかされていたため,外科的治療の進歩は長い間阻害されていた。今日でも理髪店の店頭にある,赤・青・白の表飾については,赤は動脈,青は静脈とし,白はリンパあるいは包帯を意味するなど諸説があるが,いずれにせよ外科医と理髪師との関係を示しており,当時の外科医の社会的地位の名残をとどめている。現代でも内科医はドクターdoctor,外科医はミスターMr.という称号で区別して呼ばれている。…
…そうした床屋は,しだいに民衆の要望に応じて,創傷,やけど,骨折,ねんざ,脱臼などの治療を施すようになった。とくに中世のヨーロッパでは,大学出身の医者は手の技を卑しい仕事と考え外科的治療に携わらなかったので,床屋が外科医を兼ねることが定着した。また当時の修道士は,教会の規則で定期的に剃髪と瀉血(しやけつ)のために床屋に行くことが決められていた。…
※「外科医」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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