情無(読み)なさけない

精選版 日本国語大辞典 「情無」の意味・読み・例文・類語

なさけ‐な・い【情無】

〘形口〙 なさけな・し 〘形ク〙
情愛や思いやりがない。薄情である。すげない。
※伊勢物語(10C前)六三「子三人を呼びて語りけり。二人の子は、なさけなくいらへて止みぬ」
五重塔(1891‐92)〈幸田露伴〉一七「ああ人情(ナサケ)無い野郎め、のっそりめ」
② 情緒・風情に欠けている。興ざめである。
源氏(1001‐14頃)夕顔「すき給はざらんもなさけなくさうざうしかるべしかし」
情容赦なく、残酷である。ひどい。
史記抄(1477)八「呉楚七国は亜夫が巧て平らげられたか、なさけなう罪人にして殺されたぞと論したぞ」
※山椒大夫(1915)〈森鴎外〉「そこで随分情(ナサケ)ない、苛酷な事も、ためらはずにする」
④ 期待に反して、興ざめのするさまである。なげかわしくて残念である。みじめで見るにしのびない。
※俳諧・口真似草(1656)四「寒き夜ものまぬや貧はなさけない〈以専〉」
芋粥(1916)〈芥川龍之介〉「云はなくともいい事を云って、恥をかいた自分が、情(ナサケ)なくなったからである」
なさけな‐が・る
〘自ラ五(四)〙
なさけな‐げ
〘形動〙
なさけな‐さ
〘名〙

なさけ‐な【情無】

(形容詞「なさけない」の語幹) 情のないこと。また、そのさま。感動表現に用いる。
※源氏(1001‐14頃)胡蝶われにて思ひしにもあななさけな、うらめしうもと

じょう‐なし ジャウ‥【情無】

〘名〙 (形動) 思いやりのないこと。人情のないさま。また、その人。
歌舞伎・けいせい花絵合(日本戯曲全集所収)(1773)二段目「ほんまぜうなしの野暮野暮」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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