日本大百科全書(ニッポニカ) 「成昆線」の意味・わかりやすい解説
成昆線
せいこんせん / チョンクンシエン
中国、成都(せいと)―昆明(こんめい)間の鉄道名称。延長約1100キロメートル。四川(しせん)盆地西部と雲貴高原を結び、峨眉(がび)山系や大涼山系などの険しい山地、長江(ちょうこう)の上流部である大渡河や金沙江(きんさこう)などによってうがたれた深い渓谷を越えて建設された。中国鉄道史上まれにみる難工事と称され、トンネル数427(総延長341.7キロメートル)、橋梁(きょうりょう)数991(総延長106.9キロメートル余)、大涼山系の分水嶺(ぶんすいれい)付近(標高約2300メートル)には長さ約6.5キロメートルのトンネルと、最急勾配(こうばい)を12‰(パーミル)以下に抑えるためにつくられた複雑なループ線がある。1958年に着工され、1962年にいったん工事を中止したが、1964年に再開され、1970年7月に全通した。工事再開後、おりから起こった文化大革命において、中国の鉄道建設のすばらしさを誇示するモデルケースとして大きく宣伝された。沿線の山地は少数民族(主として彝(イ)族)の居住地域であり、辺境の地とみられていたこの地域の交通の改善に鉄道の果たした役割は大きい。2000年8月に全線電化された。
[青木栄一・青木 亮]