掛留(読み)かけとむ

精選版 日本国語大辞典 「掛留」の意味・読み・例文・類語

かけ‐と・む【掛留】

〘他マ下二〙
① 引っかけて物をとどめる。綱などをかけて止まらせる。かけとどむ。
蜻蛉(974頃)上「速見(へみ)のみまきに荒るる馬を、いかでか人はかけとめんとおもふものから」
物事関係をつけてとどめる。人を引きとめる。また、この世に生きながらえさせる。かけとどむ。
源氏(1001‐14頃)真木柱「ともかくも岩間の水のむすぼほれかけとむべくも思ほえぬ世を」

かけ‐とど・む【掛留】

〘他マ下二〙
十六夜日記(1279‐82頃)「すのまたとかやいふ川には、舟を並べて、まさきの綱にやあらん、かけとどめたるうき橋あり」
※源氏(1001‐14頃)柏木「つひに、かく、かけとどめたてまつり給へるものをなど、とり集めて思砕くに」

かけ‐とどま・る【掛留】

〘自ラ四〙 物に引っかかって留まる。また、関係を保って留まる。
※源氏(1001‐14頃)松風「年ごろだに、同じいほりにも住まず、かけ離れつれば、まして誰れによりてかはかけとどまらむ」

けい‐りゅう ‥リウ【掛留】

〘名〙 ある和音から次の和音へ進行するとき、前の和音の一音故意にそのまま延長して一時的に不協和音を生じるとき、それが協和音に移って解決するまでの状態をいう。非和声的技法の一つ

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「掛留」の意味・わかりやすい解説

掛留
けいりゅう
suspension

音楽用語。先行する和音中の音が,次の強拍部で和声が変化してもなお保持されて,不協和な状態をつくっている場合をいう。その音が先行和音内にあるとき準備または予備といい,掛留ののち新しい和音に協和的に入ったとき,解決という。

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