最新 地学事典 「摩擦の擬着説」の解説
まさつのぎょうちゃくせつ
摩擦の擬着説
adhesion theory of friction
固体表面間の摩擦の成因に関する説の一つ。通常の摩擦実験に用いられる物体の表面は,巨視的には平らでも細かな凹凸(粗さ)があり,両表面の原子が摩擦抵抗力を生み出せるほど接近している「真実接触部」はごく一部である。凝着説は,真実接触部に原子結合が生じて凝着することが摩擦の成因と考える。これに,真実接触面積が巨視的法線応力に比例するという観察事実を加えれば,巨視的摩擦強度が巨視的法線応力に比例するというアモントン─クーロン則が導かれる。さらに,凝着部原子結合の剪断がパイエルス型剪断クリープであること,法線応力によるパイエルス型圧縮クリープで真実接触部が押し潰れて真実接触面積が時間増加することを加味すれば,速度・状態依存摩擦則も凝着説で説明できる。このような真実接触面積の変化は岩石を含む多くの物質で確認されている。一方,凹凸の噛み合いの乗り上げや剪断破壊等,凝着以外の効果も摩擦に寄与しうるがあまり研究されていない。
執筆者:中谷 正生
参照項目:摩擦則
参照項目:摩擦強度
参照項目:速度・状態依存摩擦則
出典 平凡社「最新 地学事典」最新 地学事典について 情報

