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摩擦 まさつfriction

翻訳|friction

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

摩擦
まさつ
friction

2つの固体が互いに接して相対運動しようとするとき,または相対運動しているとき,その接触面に沿って運動を妨げようとする抵抗。この力を摩擦力という。相対運動の有無に応じて運動摩擦静止摩擦に大別される。運動摩擦滑り摩擦転がり摩擦とに分けられることが多いが,厳密には転がり摩擦は接触領域内に静止摩擦領域と滑り摩擦領域を含む複雑な現象である。摩擦がなければ,机の上の物は滑り落ち,紐は結べず,人は歩けず,車も進まない。しかし摩擦が大きければ,スケートは滑らず,車輪は回転しない。摩擦の法則は 17~18世紀に G.アモントン,C.A.クーロンらによって得られた。摩擦の原因には,接触面の凹凸やあらさによるとする凹凸説と,接触面同士の分子間力によるとする凝着説とがあり,前説が長く優位にあったが,20世紀になって表面の仕上げと清浄化の技術が向上して摩擦機構が明らかとなり,後説の重要性も認識されるようになった。両原因のどちらが主因であるかは接触面の平滑さと清浄さに複雑に左右される。摩擦により凹凸部がからみ合ってすりへり,凝着部が剪断,形成され,接触面が摩耗して発熱する。すなわち,物体に加えられた力学的仕事は熱エネルギーとなって散逸するので,摩擦力は非保存力である。機械において接触運動する部分の摩擦を少くするためには油や空気を介在させて潤滑する。金属と油のように,固体同士でない2つの物体が接して相対運動するとき,または流体の内部で各部分が相対運動する際などに現れる抵抗も摩擦と呼ばれる。

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デジタル大辞泉の解説

ま‐さつ【摩擦】

[名](スル)
物と物とがすれ合うこと。また、こすり合わせること。「肌を摩擦して暖をとる」「乾布摩擦
人間の社会関係で、二者の間に意見や感情の食い違いによって起こる、不一致・不和・抵抗・紛争など。軋轢(あつれき)。「貿易摩擦
互いに接触している二つの物体のうち、一方が運動しようとするとき、または運動しつつあるとき、その接触面に運動を妨げようとする力が働く現象。また、その力。相対速度により運動摩擦・静止摩擦に、運動状態により滑り摩擦・転がり摩擦などに分けられる。

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百科事典マイペディアの解説

摩擦【まさつ】

物体が他の物体の表面に接しながら運動しようとするとき,または運動しているときに,接触面でこの運動をさまたげる方向に働く力。二つの物体の相対的な運動状態により,一つの物体がすべり出すまで止めようとする静止摩擦(物体がまさにすべり出そうとするときの摩擦力が最大静止摩擦力)と,運動している物体を止めようとする動摩擦(すべり摩擦ころがり摩擦など)とに分けられる。
→関連項目減衰振動トライボロジー

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世界大百科事典 第2版の解説

まさつ【摩擦 friction】

接触している二つの物体が相対的にすべりやころがり運動をするとき,あるいはしようとするときに,その接触面においてこれらの相対運動を妨げる方向の力が生ずる現象。この力を摩擦力というが,摩擦力を摩擦と略称することもある。運動がすべりの場合をすべり摩擦,ころがりの場合をころがり摩擦と呼び,単に摩擦といえばふつうは前者を指す。摩擦によって,力学的エネルギーが熱エネルギーに変換されるため,同様の変換が固体内部で行われる現象を内部摩擦というが,本項で述べる摩擦とは別の現象である。

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大辞林 第三版の解説

まさつ【摩擦】

( 名 ) スル 〔friction〕
こすること。すれ合うこと。 「体を-する」
利害・意見・性質の違いなどから生まれるもめごと。軋轢あつれき。 「 -を生ずる」
二物体が接触して相対運動をしようとするとき、または運動しているとき、その接触面で運動を阻止しようとする力が接線方向にはたらくこと、またはその力(摩擦力)。相対速度の有無により静止摩擦と運動摩擦、相対運動の種類により滑り摩擦と転がり摩擦がある。このほか、液体内部にはたらく内部摩擦(粘性)がある。 〔ロプシャイト「英華字典」(1866~69年)に friction の訳語として載る〕

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

摩擦
まさつ
friction

一つの物体が他の物体の表面に接して動きだそうとするとき、または実際に運動しているときに、その接触面に運動を妨げるような力が働く。この現象を摩擦とよび、そのときに生ずる力を摩擦力という。止まっている物体を動かそうとするときにおきる静止摩擦と、動いている物体に働く運動摩擦とがある。運動摩擦は、さらに運動の状態によって、すべり摩擦と、ころがり摩擦に分けられる。重い物体を地面の上で引きずろうとするとき、なかなか動かないのは静止摩擦のためであり、動きだしてからも大きな力を必要とするのはすべり摩擦のためである。液体や気体のいろいろな部分が異なる速度で流れている場合、隣り合った部分の間にも摩擦力が働く。このような現象を内部摩擦、または粘性とよぶ。液体や気体の中を物体が動くときに、物体の表面に平行に働く抵抗は摩擦抵抗または粘性抵抗とよばれる。空気中を進む車や航空機には空気の摩擦抵抗が働く。摩擦ということばは、通常固体表面での摩擦を意味することが多いが、このような場合は内部摩擦に対して外部摩擦とよばれることもある。一見してきれいに見える固体の表面でも、実際はいろいろな物質の薄い膜で覆われていることが多い。このような薄い吸着分子層が存在するときの摩擦を境界摩擦とよび、清浄な固体表面での摩擦を乾燥摩擦という。[石川光男]

静止摩擦

固体表面上で静止している物体を動かそうとしても、力が小さいうちは動きださない。これは力が小さいうちは加えた力と同じ大きさの逆向きの静止摩擦力が働くからである。力がある値以上になると動きだすのは、静止摩擦力には最大の値があり、それ以上は大きくならないからである。この限界の摩擦力を最大静止摩擦力という。その大きさは接触面の状態と、面に垂直に働く力によって決まり、接触面積の大小には無関係である。最大静止摩擦力は面に垂直に働く力に比例するが、その比例定数を静止摩擦係数という。この値が小さいほど物体を動かす力は小さくてすむ。水平板上に物体をのせ、面の傾角をしだいに増していくと、傾角がある値を超えたときに物体が滑り始める。物体が滑りだす直前の傾角を摩擦角とよぶ。のように物体の重さをW、斜面と物体との接触面に働く静止摩擦係数をμ、摩擦角をαとすると、斜面を垂直に押す力はWcosαとなるので、最大静止摩擦力はμWcosαとなる。この値は、物体が斜面に平行に滑り落ちようとする力Wsinαに等しいので、Wsinα=μWcosαという関係がある。したがってμ=tanαとなるので、摩擦角αを測定することによって、接触面の静止摩擦係数μが求められる。[石川光男]

運動摩擦

固体表面上を運動している物体に働く摩擦力は、静止摩擦の場合と同様に面に垂直に働く力に比例する。この比例定数を運動摩擦係数という。乾燥摩擦では、速度のある範囲内で、運動摩擦力は速度の大小に関係しない。また一般に運動摩擦係数は静止摩擦係数よりも小さい。この二つの実験法則は、「摩擦力は接触面に垂直に働く力に比例し、接触面積によらない」という摩擦の法則とともに、クーロンの法則またはアモントン‐クーロンの法則とよばれている。はいくつかの固体の摩擦係数を示すが、これは常識的な意味で固体表面が清浄だと思われる場合の経験的な値である。先に述べたように固体表面には種々の物質が吸着しているので、それらの吸着物質を厳密に取り除いて実験を行うと摩擦係数の値が大きく変わってくることも少なくない。このような事情から、静止摩擦力は運動摩擦力より大きいという法則をクーロンの法則から除外することもある。
 物体が面を転がる場合にも静止摩擦、運動摩擦の区別があり、静止摩擦力は運動摩擦力よりも大きいが、どちらもすべり摩擦に比べるとはるかに小さい。したがって、物体を動かすときにすべり摩擦を避けてころがり摩擦を利用すると、小さな力で動かすことができる。ころや乗物の車、ボールベアリングなどは、みなころがり摩擦の小さいことを利用したものである。自転車やミシンなどで、金属が接触して滑る部分に油をさすことが多いが、これはすべり摩擦を小さくして金属が擦り減るのを防ぐためである。油の分子は金属の表面に強く結合するので、表面の油の分子どうしが接触して金属は直接に触れ合わないから、この場合は油の内部摩擦が働いている。これらは摩擦を小さくするくふうであるが、摩擦を大きくするようにくふうする場合もある。靴の底やタイヤの溝は、摩擦を大きくして滑らないようにするためである。[石川光男]
『田中久一郎著『摩擦のおはなし』(1985・日本規格協会) ▽岩波書店辞典編集部編、飯野徹雄他監修『科学の事典』第3版(1985・岩波書店) ▽河野彰夫著『ポピュラー・サイエンス 摩擦の科学』(1989・裳華房) ▽角田和雄著『摩擦の世界』(岩波新書)』

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世界大百科事典内の摩擦の言及

【潤滑】より

…機械などの摩擦面を油,グリースなどによってすべりやすくし,摩擦抵抗,摩耗,焼付きなどを減らすことを潤滑という。潤滑が不十分だと摩擦抵抗が大きく,機械の運転に大きなエネルギーを要し,設計によってはセルフロックなどのため,自動機械,ロボットなどがまったく動かなくなることすらありうる。…

※「摩擦」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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