改訂新版 世界大百科事典 「敏感関係妄想」の意味・わかりやすい解説
敏感関係妄想 (びんかんかんけいもうそう)
sensitiver Beziehungswahn[ドイツ]
ドイツの精神医学者クレッチマーが創唱した精神疾患群。ガウプの影響をうけて1918年に発表した教授資格論文の題名ともなっている。敏感性格(控えめ,内気で対人関係に過敏な性格)という特定の人格構造を前提に,特定の対人的・対社会的な葛藤状況の下で出現し,関係妄想,被害妄想などを抱き,統合失調症の妄想型やパラノイアと区別されがたい病像を示すとされる。クレッチマーはこの論文で人格構造と精神病を誘発する体験との間には内的関連があり,この関連から妄想が内容的にも形式的にも体験と人格構造から導出され,人格,体験,精神病が一つの完結した全体を作ることなどを明らかにしている。H.テレンバハのメランコリー論はこの妄想論の図式の延長線上にあり,B.パウライコフは〈30歳代に初発する幻覚妄想性精神病〉がこれに相当すると述べている。高良武久は日本の対人恐怖がこれに当たると指摘した。
執筆者:飯田 真
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報