日本大百科全書(ニッポニカ) 「敲打器」の意味・わかりやすい解説
敲打器
こうだき
敲(たた)いたり、打ったり、割ったりするのに用いられた石器。ヨーロッパ、アフリカの旧石器時代の礫器(れっき)など、人間の初期の生活から使われた重量感のある石器の総称である。石塊に粗雑な剥離(はくり)を施し製作されたものであるが、その方法により、礫器pebble tool、片刃の粗製石器chopper、両刃の粗製石器chopping tool、握斧状石器hand-axe、鉈(なた)状石器cleaverなどの種類があるが、全体としては機能分化があまりみられず、いわゆる「万能石器」であったとも考えられている。
日本では群馬県岩宿(いわじゅく)遺跡、同権現山(ごんげんやま)遺跡での石斧(せきふ)の発見以来、先土器時代のいくつかの遺跡で検出されているが、それらについてとくに注目されるのは、刃部の磨かれている例が存在することである。ヨーロッパにおける旧石器時代の敲打器はすべて打製のものであり、磨製石器の出現は新石器時代以降であることを考えると、その特殊性が注目される。
[戸沢充則]