化学辞典 第2版 「斜方晶系硫黄」の解説
斜方晶系硫黄
シャホウショウケイイオウ
rhombic sulfur
硫黄の同素体のうち,室温での唯一の安定形.α(相)硫黄.天然には,火山地域でしばしば結晶として産出する.硫黄華を二硫化炭素に溶解し,濾液を室温で放置すると得られる.黄色の斜方晶系結晶.空間群Fdddに属し,単位格子に16個の S8 分子を含む分子結晶.分子は王冠状の八員環で,S-S0.2046~0.2052 nm.∠S-S-S107.3~109.0°.融点112.8 ℃.密度2.07 g cm-3(20 ℃).水に不溶,エタノール,エーテル,ベンゼン,グリセリンに微溶,塩化硫黄,二硫化炭素に易溶.単斜晶系硫黄との転移温度は95.4 ℃ で互変.溶液中でも室温で S8 環が存在している.硫黄をヨードホルム中から結晶させると,電荷移動錯体CHI3・3S8が針状晶として得られ,このなかでは,すべてのヨウ素原子が S8 環の硫黄に結合している.このほか,斜方晶系のものとしてシクロ十二硫黄がある.[CAS 7704-34-9]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報