有りし(読み)ありし

精選版 日本国語大辞典 「有りし」の意味・読み・例文・類語

あり‐し【有し】

  1. 〘 連語 〙 ( ラ変動詞「あり(有)」の連用形に過去の助動詞「き」の連体形「し」が付いて連体詞のように用いられるもの )
  2. ( 「以前あった」の意で ) 以前の。昔の。かつての。また、前に述べた、あの。
    1. [初出の実例]「ありし童いで来て例のいも、ところ、焼き調じて」(出典:宇津保物語(970‐999頃)俊蔭)
    2. 「ありしさまなど、かひなきことなれど、この宮にこそは聞こえめ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)総角)
  3. ( 特に、「かつて世にあって今はいない」というところから ) なくなった。生前の。
    1. [初出の実例]「父の夢に、有りし女子(にょし)〈略〉心に思ひ歎きたる気色にて有る程に〈略〉と見て」(出典今昔物語集(1120頃か)一三)
    2. 「怪しき鬼(もの)の化(け)してありし形を見せつるにてぞあるべき」(出典:読本・雨月物語(1776)浅茅が宿)
  4. ( 準体言として、「以前あった時、事」の意 ) 以前の状態。昔の時。
    1. [初出の実例]「出でていなば誰か別れの難からんありしにまさる今日はかなしも」(出典:伊勢物語(10C前)四〇)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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